東京都調布市で1月、市の広報紙と市議会公明党会派の広報チラシが一緒に、市内全戸の約12万世帯に配布されていたことが分かった。市には「特定の政党と関わりがあるように見える」などと苦情が相次いだ。市は会派からの求めで配布業者の連絡先を伝え、広報紙に折り込まないよう求めたが、それ以上の条件を付けなかったという。専門家は「公正さや中立性への自覚を欠いている」と指摘する。
◆一部で「折り込み」…市広報紙の中立性に疑念招く
 市の委託を受けた配布業者によると、1月19、20両日に市の広報紙「市報ちょうふ」と、公明会派の広報チラシ「調布公明」など計4種類を全戸配布した。チラシには、市議団5人が長友貴樹市長らに予算要望書を渡す写真を掲載。一部地域では広報紙の間に挟んで配布された。
 市議会公明党の平野充幹事長によると、従来の依頼先の新聞販売店に全戸配布を断られ、市広報課に広報紙の配布業者の連絡先を聞いて依頼した。業者は取材に「『他のチラシと一緒に配る合配は市の許可がないと受けられない』と一度は断った」と説明。その後、公明側から「市に確認した」と連絡があり、依頼を受けたという。
 市広報課の担当者は「市報への折り込みをしないよう条件を付けたが、それ以外の注文は付けなかった」とする。平野幹事長は「一部地域で間に挟んで配布されたことは残念。今後は配慮したい」とコメント。さらに「広報紙と同日配達だったので単価が安くなった」と明かした。市はホームページに「広報紙の中立性について市民が疑念を抱くおそれがある。今後は単独で配達されるよう徹底する」との文章を掲載した。(花井勝規)
◆「中立性守られるべきだ」
 武田真一郎・成蹊大法学部教授(行政法)の話 公費で配布される自治体の広報紙は中立性が守られなければならない。調布市長選や参院選まで半年を切っている時期だけに、政治活動や事前の選挙運動を市が後押ししているとの誤解を与える恐れがあり、そのような事態は回避すべきだった。

東京新聞 2022年2月9日 06時00分
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