https://www.sankei.com/article/20220209-MWD5AFP5DFOGZGJLPH7F64SQTE/
2022/2/9 05:00



ロシアに対し、腰の引けた決議を採択した衆院の姿勢に失望した。

緊迫化するウクライナ情勢について「深く憂慮する」などとした決議を衆院本会議が8日、賛成多数で採択した。

露軍によるウクライナ侵攻の危険が日増しに高まる中での採択だ。厳しい姿勢が望まれた。

だが、名指しでの批判を避けるなど、ロシアへの配慮を強くにじませたのは残念である。

採択されたのは、「ウクライナをめぐる憂慮すべき状況の改善を求める」決議で、日本・ウクライナ友好議員連盟が作成した。

決議は「ウクライナの主権と領土の一体性を一貫して支持している」とし、「いかなる国であろうとも、力による現状変更は断じて容認できない」とした。ロシアが状況の改善をすべきは当然だが、肝心な国名が抜けている。

ロシアという表記は使っているが、ウクライナの地理的な位置について、「EU(欧州連合)とロシアの間」と説明する中で言及しただけだ。情勢が不安定化している理由についても「国外勢力の動向」との表現にとどまった。

これでは、どこの国に対して状況の改善を求めているのか分からない。ロシアからは、報復を恐れて名指しを避けたと足元をみられるだけである。

ロシア制裁をめぐり、米独仏など首脳外交を活発化させている先進7カ国(G7)からも、ウクライナ国境に軍隊を展開するロシアの不当性に、日本の国会は目をつぶっているとみられかねない。

ロシアは不法占拠する北方領土で軍事演習を繰り返している。主権と領土の侵害という点で、日本はウクライナと変わらない。衆院はそれを忘れたのか。

国会の決議には、主権者である国民の声を代表して、政府の行動を後押しする役割がある。

その衆院が、政府がロシアへの制裁内容を決める前から、あいまいな表現に終始し、腰砕けになっていたのでは話にならない。政府に対して、ロシア制裁を手加減せよと言っているに等しい。

1日に衆院が採択した中国による新疆ウイグル自治区などでの人権問題に関する決議でも、中国を明示することを避けた。決議は採択すれば何でも良いというわけではない。中身こそが大切だ。言うべきを言わず、骨抜きにされた決議は、百害あって一利なしだ。