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2022/2/15 00:35


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東京都武蔵野市の武蔵野市役所(飯田英男撮影)

東京都武蔵野市で自治基本条例の原案を作った懇談会が法的根拠のない要綱のみに基づいて設置されていた問題で、市が懇談会の委員を非常勤職員と位置づけ、報酬を支払っていたことが14日、分かった。地方自治法は付属機関の構成員を非常勤職員とし、報酬の支給を求めている。市は懇談会について、単なる意見聴取の場であり付属機関には当たらないと主張するが、実態として付属機関に近い運用をしていたことが明らかになった。

この問題では、懇談会が地方自治法の規定する付属機関にあたるか否かが争点になっている。付属機関であれば、法律や条例に基づいて設置するとの規定が地方自治法にあり、要綱のみで懇談会を設けた市の手法は違法だった可能性が高まる。市は懇談会を「行政運営上の意見聴取、情報や政策等に関して助言を求める等の場」と位置づける。松下玲子市長は14日の記者会見で「市長の私的諮問機関であり付属機関にあたらない。違法といわれるのは疑問を感じる」と述べた。

だが他自治体では、武蔵野市の懇談会と似た組織が住民訴訟や住民監査請求で違法だと認定されるケースが相次いでいる。さらに今回、市は懇談会の委員を非常勤職員と位置付け、報酬を支払っていた。全国町村会は、付属機関以外の組織であれば構成員は「私人」であり、報酬ではなく謝礼を支出すると整理している。これに従えば、市は懇談会を付属機関として扱っていたことになる。

市の担当幹部は産経新聞の取材に「懇談会の委員には、規定に基づき日当として報酬を支払った」と述べた。非常勤職員の報酬は条例で、1日あたり最大2万8千円と定められているが、実際に支払った金額については「公開情報ではない」(担当幹部)として明らかにしなかった。懇談会の副座長だった天野巡一・岩手県立大名誉教授は「『報酬』の支払いは特別職公務員に行うので、付属機関の要素が強い」と指摘している。

懇談会は平成28年、自治基本条例制定に先立ち、大学教授らを委員として設置された。懇談会が取りまとめた原案に基づき、市は令和2年4月に自治基本条例を施行。住民投票については、別に条例を定めるとの規定が盛り込まれた。これを受け、市は日本人と外国人を区別せずに投票権を認める住民投票条例の制定を目指していた。自治基本条例の制定過程に疑義が生じれば、住民投票条例の行方に影響を与えそうだ。