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毎日新聞 2022/2/16 18:53(最終更新 2/16 20:10) 1098文字




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自民党の世耕弘成参院幹事長

 政府の新型コロナウイルスの水際対策を緩和するよう求める圧力が自民、公明両党内で高まっている。岸田文雄首相は17日の記者会見で入国者総数の上限の引き上げなどを発表する予定だが、国際競争力の低下を懸念する与党からは、さらなる緩和を求める声も上がる。

 「『水際作戦』が少し厳しすぎるのではないか。日本が(各国から)蚊帳の外にいる状況は見直してほしい」。自民の藤井基之参院政策審議会長は16日、松野博一官房長官に参院自民が独自にまとめた緊急提言を手渡した。提言は、現在の水際対策について「世界的な経済復興から取り残され、人材育成にとっても大きな損失となっている」と指摘。ワクチン接種者の入国後の待機期間を主要7カ国(G7)並みに免除することや、入国手続きの簡素化などを求めた。



 政府は昨年11月末、外国人の新規入国を原則禁止。12月1日には日本人と「特段の事情」を持つ外国人の入国者総数の上限も、1日5000人から3500人に引き下げた。当初は国内感染の抑制に「強い支持を得た」(自民の世耕弘成参院幹事長)が、今年に入って、重症化率が低いなどオミクロン株の特性が確認されるにつれ、経済界などから「諸外国に比べて厳しすぎる」と声が上がった。

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オミクロン株拡大後の水際対策の経緯

 政府は入国者の待機を14日間から段階的に7日間に短縮し、国費留学生の入国を認めるなど徐々に緩和してきたものの、「いわゆる鎖国状態」(山本朋広・自民文部科学部会長)という不満は消えていない。



 自民の安倍晋三元首相は10日の安倍派会合で「世界の経済の中で、日本が立ち遅れる危険性に直面している」と強調。公明の山口那津男代表も15日、首相官邸で記者団に「水際対策にどういう効果があるか、厳しく維持することでどういう不利益があるか、きちんと捉えた対応を求めたい」と語り、留学生や文化・スポーツ交流関係者らの受け入れ緩和を要求した。岸田首相は17日に会見し、1日の入国上限を5000人に戻し、入国者の待機期間を3日に短縮するなどの方針を表明する見込みだ。

 ただ、自民政務調査会は15日にまとめた決議文で、日本への留学生の入国を1日の上限の枠外で認めることも求めた。2020年1月〜21年10月に在留資格認定証明書が発給されたにもかかわらず、入国できていない留学生が約14・7万人に上るためだ。



 菅前政権は「コロナ対策が後手に回った」と批判されて支持率が急落した経緯があり、夏に参院選を控える参院側の危機感は強い。世耕氏は15日の会見で「これだけ国内で市中感染が出ており、水際対策は意味がない。できれば(入国)人数の制限も撤廃すべきだ」と踏み込んだ。【東久保逸夫、中村紬葵】