https://www.sankei.com/article/20220217-I7VTANRZQ5JJPMYYPGLXHRCDVM/
2022/2/17 11:44
産経WEST


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京都市は17日、別荘や空き家などの居住実態のない住宅の所有者に対し、新たに「非居住住宅利活用促進税(別荘・空き家税)」を課す条例案を2月市議会に提案した。慢性的な財政難への対応に加え、富裕層によるセカンドハウスとしてのマンション購入増加で不動産価格が高騰し、子育て世代が市外へ流出するのを防ぐ狙い。導入は早くても令和8年以降で、初年度に8億6千万円(1万3千件)、翌年度以降は9億5千万円(1万5千件)の税収を見込む。

国内では、静岡県熱海市が昭和51年にリゾートマンションなどに「別荘等所有税」を導入したが、都市部で空き家も含めた幅広い住宅の所有者を対象とした税は全国初という。

課税対象者は生活拠点が別にあり、空き家や別荘、セカンドハウスなど普段は住んでいない住宅の所有者。市条例で保全対象となる京町家や景観重要建造物、賃貸・売却を予定する住宅などを除く。

課税額は、固定資産評価額の0・7%に、立地や広さを考慮した「立地床面積割」を加えて算出。試算では、別荘目的で市中心部の高層分譲マンションの一室(床面積100平方メートル)を所有した場合の税額は年間約94万円、京都駅近くのワンルームマンション(同30平方メートル)では同約3万円となる。

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居住実態の有無は個人市民税や固定資産税のデータのほか、現地調査を踏まえて判断する。

高度経済成長期の狭小住宅など価値が低く、売買や賃借しづらい建物の所有者に配慮し、新税導入から5年間は100万円未満の建物を課税対象外とした。5年経過後も、家屋の固定資産評価額が20万円未満の建物は対象外とする。条例施行から5年ごとに課税条件などの検証を行うという。

家族向けマンション 相場は6千万円
「分譲はもちろん、賃貸でも手が出ない」。京都市内のホテルに勤務する男性(29)は嘆く。3年前に結婚した際、2千万〜3千万円の予算で市内の物件を探したが、相場は2〜3倍のため、断念した。現在は大阪府境近くの阪急京都線沿線の賃貸マンションで、会社員の妻(32)と長女(1)と暮らす。男性は「職場が近い方が理想的なので市内に住みたい」といい、市の新税の影響を見て、今後について決めたいとしている。

市内では、同様の理由で子育て世代の市外流出が顕著だ。市の担当者は「これ以上流出が続くと、地域力の地盤沈下が進む悪循環に陥る」と懸念する。

不動産経済研究所(大阪市)によると、京都市内で令和3年に分譲されたマンション1平方メートル当たりの価格は前年比9・4万円(12・6%)増の84・1万円。10年間で約1・6倍に跳ね上がった。主に家族向けの需要が高い70平方メートルの相場は約6千万円。四条烏丸など市中心部では7千万〜1億円の物件も多い。

背景には、京都は国内外の富裕層に加え、企業が所有して接待に使う物件としての人気も高く、新型コロナウイルス禍でも影響を受けていないという事情があるという。

都市政策に詳しい京都府立大京都地域未来創造センター長の川勝健志教授は「新税導入で不動産が動き出し、若い世代が住めるような状況を生みだすことが期待される。地域力の回復にもつながるのではないか」と話している。(田中幸美)