韓国の現代自動車が日本の乗用車市場に13年ぶりに再参入する。車種を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)に絞り、オンラインで7月から販売する。

 現代は系列の起亜自動車をあわせると2021年の世界販売が667万台で世界屈指のグループだが、日本では販売不振で09年12月に撤退していた。再参入にあたりEVのSUV「アイオニック5」(税込み479万円から)とFCVのSUV「ネッソ」(同776万8300円)を夏に投入する。脱炭素の流れを受け、2車種とも排ガスがないゼロエミッション車だ。

 19日には、東京・原宿のJR原宿駅前に展示場「ヒョンデハウス原宿」(東京都渋谷区神宮前6の35の6)をオープンした。5月28日までの期間限定だ。試乗や購入の相談も受け付ける。5人のクリエーターによるライフスタイルのイメージ展示も進めてゆく。

 国内ブランドが圧倒的に強い市場に再び挑む「ヒョンデ・モビリティ・ジャパン」の加藤成昭(かとうしげあき)マネージングダイレクターに、戦略などを聞いた。

日本市場が重要なわけ
 ――再参入の狙いは。

 「2001年に進出し09年末に撤退するまでは、現代と提携関係にあった三菱自動車のディーラー網で販売していました。受け入れられず撤退したので、日本に戻らないと何となく決めていました。ただ、鄭義宣(チョンウィソン)会長は日本に造詣(ぞうけい)が深く、興味を持っていました。『日本市場にプレゼンスがないのは本当に良いのか』とずっと考えていたようです」

 「日本が世界で3番目に大きな市場だということもあるのですが、他国と比べて品質や接客、サービスへの要求水準が非常に高いという点が重要でした。『日本社会で受け入れられないと本当のグローバル企業ではないのではないか』ということを鄭会長は考え、張在勲(チャンジェフン)社長と2人で『やはり日本には出たい』と議論していました」

 「『日本市場で受け入れられないと、世界、特に韓国を除くアジアで受け入れられないのではないか』と思ったことがあります。東南アジアは工業製品は日本製がすごく強く、欧米メーカーのプレゼンスが小さい。日本で認知されないと、アジアの人たちの好みもつかめないということもありました」

 「韓国で当社はほぼ7、8割のマーケットシェアを持っています。ところが、日本市場は世界最大のトヨタ自動車でさえシェアは4割に満たない。まことに不思議な市場です。それだけお客様の選択眼が強いし、競争が熾烈(しれつ)なのです。だから自身がここに身を置かないと、世界展開の課題が見えてこない」

「お客様を良く理解していなかった」
 ――撤退の経験をもとに準備してきました。

 「3年前に本社と日本法人で小さなプロジェクトチームを立ち上げ、日本に出るには何をすべきか議論してきました。3年間で一番大きかったのは、既存のお客様600人のほぼ全員にインタビューしたことです。課題として出てきたのは『やはりお客様を我々はよく理解していなかった』という点です」

 「『本国で売れる物は日本で…(以下有料版で,残り1244文字)

朝日新聞 2022年2月19日 14時00分
https://www.asahi.com/articles/ASQ2L7K1RQ2LULFA01T.html?iref=comtop_7_07