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毎日新聞 2022/2/20 20:42(最終更新 2/20 21:15) 923文字




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ペアで優勝し金メダルを手に笑顔を見せる隋文静、韓聡組=北京・首都体育館で2022年2月19日、手塚耕一郎撮影

 オリンピックの開催国は獲得メダル数が増えると言われる。慣れ親しんだ練習環境や熱狂的な応援などの「地の利」に加えて、自国開催の五輪をターゲットに強化を数年がかりで推し進めることができるからだ。

 新型コロナウイルスの影響下にあっても「魔法」は健在のようだ。昨夏の東京オリンピックで、日本は金メダル27個を含む計58個とメダルラッシュに沸いた。ともに史上最多だった。北京冬季五輪もその傾向は変わらない。中国は金9個を含む計15個のメダルを獲得。過去最多(金5個、メダル総数11個)をいずれも更新した。



 冬季五輪の開催国でこれまで最多の金メダルを獲得したのはバンクーバー五輪のカナダの14個。約5年間に及ぶ官民一体の選手強化キャンペーン「オウン・ザ・ポディウム(表彰台を勝ち取れ)」を展開。強化予算を一元化して戦略的に競技に資金を振り分けたほか、科学や医療など幅広い支援が実った。

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近年の冬季五輪を開催した国とその獲得メダル数

 日本も1998年長野五輪で現在でも過去最多の五つの金メダルを獲得。計10個のメダルを手にした。2002年ソルトレークシティー五輪では、スポーツ大国の米国が計34個のメダルを荒稼ぎした。開催国として最多の数字だった。長野五輪以降、冬季五輪の開催国でメダル数を減らしたのは06年トリノ五輪のイタリアだけだ。



 ただし、この「魔法」は必ずしも長くは続かない。日本は長野五輪の次の大会は金メダルなしの計2個と激減。平昌五輪でメダル総数17個と躍進した韓国も今大会は9個とやや苦戦している。強化態勢が一過性でなく、持続可能なものになるかどうかは開催国次第だ。

 国を挙げた強化は弊害も生む。最たる例がロシアだ。自国開催の14年ソチ五輪で前回大会の2倍以上となる33個のメダルを獲得したが、その後、組織的なドーピングが発覚。メダルは剥奪され、選手も個人資格で五輪に参加する不安定な状況が続く。



 中国は19日、フィギュアスケート・ペアで地元の期待を一身に集める隋文静、韓聡組が金メダルに輝いた。感染対策として声援の自粛が求められるなか、中国在住の招待客から「加油(頑張れ)」の大合唱が起きた。この熱狂が大会後も続くかどうか、国の威信を懸けて祭典に臨んだ中国の次なる課題となる。【石川裕士】