ロシアによるウクライナ侵攻について、中国はロシアに対する非難を避けつつも失望感は示している。米中対立の構図の中でロシアとの協力関係は重要だが、今回のロシアの行動は欧米だけでなく、国連やアジア、アフリカなど各国も批判しているためだ。

 中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)報道局長は24日の定例記者会見で「ウクライナにおける状況は我々が見たくなかったものだ」と述べ、ロシアを名指しすることは避けつつ「各方面は自制すべきだ」と呼びかけた。記者に「ロシアによる侵略と見ないのか」と詰め寄られ「中国人は結論を急がない」と苦しい返答を迫られる場面もあった。

 中国の習近平国家主席は2月4日に北京で開催したプーチン露大統領との会談で、北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を要求するロシア側の主張を支持し、足並みをそろえた。一方でウクライナの領土や主権については「各国の主権、独立、領土保全は尊重されるべきで、ウクライナも例外ではない」(王毅国務委員兼外相)と、ロシアに自制を求めている。

 中国は米国との対立を背景に、利害が一致する部分でロシアと連携しているが、ウクライナも友好国だ。2011年には戦略パートナーシップに関する協定を締結。中国初の空母となった「遼寧」はウクライナから購入した空母を改修して就航させており軍事面でも結びつきが強い。このためウクライナ問題でロシアを一方的に支持するわけにはいかない。14年にロシアがウクライナ南部クリミアを強制編入した際も中国は明確な態度を示していない。

 また、ロシアが主張するウクライナ東部・親露派支配地域の「独立」は、国内に多くの少数民族を抱え、台湾独立の動きを警戒する中国にとって、敏感な問題だ。実際に中国はウクライナの状況を台湾と比較することに強く反発している。

 台湾の蔡英文総統は23日、ウクライナ情勢の急変で中国の軍事的圧力が増すことを念頭に、台湾海峡周辺の警戒強化を指示した。これに対し華氏は24日の会見で「台湾当局の一部の人々がウクライナ問題に便乗するのは賢明ではない」と批判。「台湾はウクライナではない。台湾が常に中国の領土と不可分の一部なのは、反論の余地のない歴史的、法的事実だ」と述べ、主権国家であるウクライナと台湾を同列に扱うことに反発した。

 中国は今秋、5年に1度の中国共産党大会を迎え、習総書記が3期目続投を目指すとみられている。習氏にとっては外交、内政とも安定の維持が最優先事項だ。ロシアによるウクライナ侵攻の余波を受けるのは避けたいのが本音とみられる。【北京・岡崎英遠】

毎日新聞 2022/2/24 22:00(最終更新 2/25 00:39) 1067文字
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