ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、ロシアとの経済協力を見直すよう求める声が与野党から出ている。岸田文雄首相は25日に追加制裁として半導体の輸出管理の厳格化などを発表した。ただ、輸出管理を担当する萩生田光一経済産業相はロシア経済分野協力担当相でもあり、ポストの必要性に疑問符が付いている。

首相は25日の参院予算委員会で、経済協力担当相のポストが必要か問われ「国際法違反の行為が高いコストを伴うことを明らかにするのが重要だ」と述べ、萩生田氏の兼務を継続する意向を示した。ただ、「当面は北方領土問題などについて申し上げることは控えなければならない」とも述べ、制裁の実施に専念させる考えを示した。国民民主党の矢田わか子氏に答えた。

「制裁」と「協力」の担当が同一人物であることに、理解は得られていない。同日の自民党外交部会などの合同会議では「片や強い制裁といいながら経済協力を続ければ、西側諸国に信用されない」(佐藤正久同部会長)、「内閣にロシア経済を支援する担当相がいる」(衛藤征士郎・党外交調査会長)と批判が相次いだ。

政府はこれまで、北方四島での共同経済活動をはじめ、ロシアとの経済協力を呼び水に領土交渉の前進を図ってきた。だが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、共同経済活動は停滞している。


経済協力の旗を降ろせば、制裁措置に厳格に取り組む姿勢を示す象徴的な意味はあるが、領土問題解決への糸口を自ら断つことにつながりかねない。経済協力をやめたところでロシアが行動を改める保証もなく、外務省幹部は共同経済活動を打ち切る効果について「日本とロシア、どっちに痛手か分からない」と話す。(大橋拓史)

産経新聞 2022/2/25 18:36
https://www.sankei.com/article/20220225-6DMGRLFWNFLSPOPCPLN2PIZLPI/