望まない妊娠をした女性が事実上、匿名で出産できる「内密出産」について、後藤茂之厚生労働相は25日の参院予算委員会で「厚労省の所管法令に照らして違法性はない」との認識を示した。また、医師が母親の名前を記載せずに出生届を出す行為について、古川禎久法相は、ガイドラインなどで「正当な業務」と認められれば違法性はないとの認識を示し、厚労省とガイドライン作成について協議する考えを示した。

 内密出産は熊本市の慈恵病院が独自に取り組んでおり、国民民主党の伊藤孝恵氏が、病院で2021年12月に10代女性が内密出産を希望して子供を産んだ事例を踏まえて政府の見解をただした。


 後藤氏は「子供の出自を知る権利など法律の諸課題があるが、医師法、児童福祉法で法的な問題はない」との考えを示した。

 内密出産に立ち会った医師が母親の名前を記載せずに出生届を提出する行為が罪に問われるかについて、熊本地方法務局は2月10日に病院に示した回答で見解を示さなかったが、古川氏はこの日、ガイドラインなどで刑法上の「法令または正当な業務による行為」とみなされれば「犯罪は成立しない」と答弁した。


 また、古川氏は「生まれた子供が日本国籍を有すると認められる以上、早急に戸籍を作るべきだ。厚労省とも相談しながら、必要とあれば適切なガイドラインができるように協力して進めていきたい」と述べた。

 伊藤氏は内密出産に関する法整備を求めたが、岸田文雄首相は「子供の出自を知る権利などの課題について、一つ一つ慎重に議論を深める必要がある」と述べるにとどめた。


 参考人として出席した病院の蓮田健院長は、望まない妊娠をした女性が孤立出産に追い込まれ、子供の殺害や死体遺棄事件につながっていると訴え「赤ちゃんには罪も責任もない。赤ちゃんの健康と幸せのために(内密出産を)お許しいただきたい」と述べた。予算委の後、蓮田院長は「医療関係者や児童相談所が安心できるよう(ガイドラインなどを)整えていただきたい」と話した。

 慈恵病院で21年12月に内密出産を希望して出産した西日本の10代女性は「親に出産を知られたくない」などと話し、新生児相談室長にだけ身元を明かして退院した。現在は戸籍作成に向けて病院と熊本市が協議を進めている。

毎日新聞 2022/2/25 20:22(最終更新 2/25 20:22) 941文字
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