政府は25日、ウクライナに侵攻したロシアに対する追加の経済制裁を決めた。政府は当面、ウクライナ情勢への対処に注力する意向で、日ロ間の懸案である北方領土交渉をめぐる対話は継続が困難な状況だ。停滞する領土問題解決は一段と不透明になっている。
 「国際法違反の行為が高いコストを伴うことを明らかにすることが重要だ。当面、領土問題等について申し上げることは控えなければいけない」。岸田文雄首相は25日の参院予算委員会でこう語り、領土問題はいったん棚上げにせざるを得ないとの考えを示した。
 領土問題は安倍晋三首相(当時)がプーチン大統領と会談を重ね、一時は解決に向けた機運が醸成されたようにも見えた。日本側はロシアとの共同経済活動をてこに領土問題を動かすことを狙ったが協議は停滞。その後は事務レベル協議を継続し、首脳間を含むハイレベルでの交渉再開を模索していた。
 岸田政権も粘り強く交渉を進めながら解決を目指す方針を掲げたが、そうした中でロシアがウクライナに侵攻。日本政府は「国際秩序の根幹を揺るがす」と非難し、欧米と足並みをそろえる形で追加制裁に踏み切った。
 2014年にロシアがクリミア半島を併合した際の制裁は実効性が乏しいとの指摘もあったが、外務省幹部は「今回は欧米と連携しているから効果があると思う」との見方を示す。
 ただ、ロシア側の反発は強く、別の幹部は「ロシアからは同等の報復措置が返ってくる」と分析。関係の冷却化は避けられない情勢だ。政府関係者は「今、領土交渉を進められるかと言われれば、それはできない」と話した。
 自民党内の対ロ感情の悪化も交渉再開に影を落とす。25日の党外交部会などの合同会議では、共同経済活動の枠組みの見直しを求める声が上がった。現在は萩生田光一経済産業相が兼務するロシア経済分野協力担当相ポストを問題視する意見も出された。
 自民党中堅は「経済協力で領土を返すわけではない。今の路線はもう駄目だ」と述べ、路線転換の必要性を訴える。岸田政権はロシアとの関係で難しいかじ取りを迫られそうだ。

時事通信 2022年02月26日08時09分
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