ロシアの侵攻に揺れるウクライナは、国内IT(情報技術)産業が急成長しており、「東欧のシリコンバレー」と呼ばれることも増えてきた。米グーグルや日立製作所など世界の巨大企業がビジネスを拡大中だっただけに、ウクライナ情勢の悪化は世界のハイテク産業の行方にも暗い影を落としそうだ。

現地在住技術者「不安でいっぱい」
 「IT産業で注目を集め、海外からの受注が順調に伸びていたところだったのに。ロシア軍の侵攻で今後どうなるのか不安でいっぱいです」。ウクライナ南部の都市ザポリージャ在住のIT技術者、アルテム・コバルさん(28)が25日、毎日新聞のオンライン取材に応じてくれた。

 コバルさんの会社は欧米や日本など外国企業からシステム開発を請け負っている。コバルさんはロシアの侵攻後も自宅で仕事を続けているが、「インターネット回線が遮断されれば終わり。仕事はもちろん、発注者への連絡すらままならなくなる」と表情を曇らせた。

 ザポリージャではまだロシアによる爆撃などの被害は出ていない。しかし、市民は侵攻に備えて食料品などの買い占めに走っているという。「24日にスーパーに行ったけど、パンもなかったよ」。コバルさんはこうため息をついた。

 ウクライナは旧ソ連時代から核開発や宇宙分野などの拠点だった。1986年に爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発も立地している。もともと理系人材が多かったことに加え、2019年に就任したゼレンスキー大統領がIT産業で外国の投資を呼び込む戦略を打ち出したこともあり、IT産業が急速に発展している。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ウクライナの人口約4400万人に対し、18年時点でIT技術者は18万人、25年には25万人にまで拡大する見通しだ。周辺国に比べIT人材が飛び抜けて多いうえ、人件費が米国の4分の1程度と安いことから、米欧を中心にウクライナとのビジネスが加速していた。こうした中で始まったのがロシアによる侵攻だ。

日本企業「ウクライナなくてはならない」
 東京都内にあるソフトウエア開発会社は…(以下有料版で,残り761文字)

毎日新聞 2022/2/26 13:00(最終更新 2/26 13:00) 有料記事 1620文字
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