主権国家であるウクライナへのロシアの武力行使が公然と続く中、国際社会からはロシアを非難する声が高まっている。国連安全保障理事会(15カ国)によるロシア非難決議案は25日、ロシア自身による拒否権で否決されたが、中国は拒否権を行使せず「棄権」に回り、国際社会の声に一定の配慮を示した。一方、北大西洋条約機構(NATO)も「即応部隊」の初の集団防衛のための東欧派兵を決めるなど、対露包囲網が強まっている。【ニューヨーク隅俊之、ブリュッセル岩佐淳士、ロンドン服部正法、ワシントン鈴木一生】

 「見境もなく、無責任な常任理事国が隣国を攻撃し、国連を破壊するために権力を乱用した」。決議案否決後の演説で、米国のトーマスグリーンフィールド国連大使はロシアを非難したうえで、「私たちの声に拒否権は行使できない」と強調した。

 安保理は25日、ウクライナに侵攻したロシアを非難する決議案を採決にかけた。米国とアルバニアが共同提出したもので、ウクライナからの即時撤退などを求めており、日本を含む約80カ国が共同提案国に加わった。だがロシアは常任理事国に認められた拒否権を行使し、決議案は否決された。賛成は11カ国だった。

 ロシアの拒否権行使は確実だったが、同じく拒否権を持つ中国がロシアに同調せず棄権に回るかが焦点の一つだった。

 安保理外交筋によると、中国は当初、拒否権行使に傾いていたという。しかし決議案の中で、ウクライナ侵略や親露派支配地域の独立承認を「非難する」との当初案から「遺憾の意を示す」に表現が変わり、国連による経済制裁や軍事行動につながる国連憲章7章への言及も削除された。これによって中国は拒否権行使を見送ったという。中国は「国家の主権と領土保全を守る」との立場は示しており、国際社会の大勢への配慮をかろうじて見せた格好だ。

 中国国営中央テレビ(電子版)によると、習近平国家主席は25日、プーチン露大統領と電話協議し、「情勢が劇的に変化し、国際社会に大きな懸念を抱かせている」と指摘。「ロシアとウクライナが交渉によって問題を解決することを支持する」と述べた。これに対しプーチン氏は「米国とNATOは長い間、ロシアの正当な安全保障上の懸念を無視し続けた」などとロシアの立場を説明した。

 中国は2014年にも、…(以下有料版で,残り1540文字)

毎日新聞 2022/2/26 19:37(最終更新 2/26 19:37) 有料記事 2490文字
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