ウクライナのゼレンスキー大統領が早期の欧州連合(EU)加盟を求めていることについて、EU内で後押しをする声が強まっている。東欧などの加盟国がゼレンスキー氏の要求を支持しているほか、欧州議会も1日、EU各機関にウクライナを加盟候補国とするための取り組みを求める決議案を採択した。しかし、EUがウクライナの加盟に向けて踏み込めば、欧州とロシアとの対立はさらに深まる。オランダなどは慎重姿勢を崩しておらず、現時点で加盟国間の合意は難しいとみられる。

 ゼレンスキー氏は2月28日、EUへの加盟申請書に署名し、「特別な手続きで直ちに」EU加盟を認めるよう求めた。ウクライナはEUと自由貿易協定などの「連合協定」を結んでいるが、正式な加盟候補国ではない。加盟手続きを本格的に進めることで欧米の支援をより強固にし、ロシアに対抗する狙いとみられる。

 欧州ではロシアの侵攻を受けるウクライナと連帯を強めるムードが高まっている。欧州メディアによると、これまでポーランドやブルガリアなど11加盟国がウクライナの加盟を支持。欧州議会は3月1日に採択した決議案で、EU各機関に対し、「EU条約に沿ってウクライナをEU候補国の地位を与えるために取り組むこと」を要求した。欧州議会にはゼレンスキー氏がオンラインで参加。「あなたたちが私たちを見放さないことを証明してほしい」と演説すると、議場ではスタンディングオベーションが起きた。

 しかし、EUがウクライナの加盟に向けて本格的に動けば、ロシアが反発するのは必至だ。2014年のロシアによるクリミア半島の強制編入は、ウクライナとEUとの関係強化にロシアが懸念を強めたことが、背景にあった。

 EU加盟を巡ってはトルコやセルビア、北マケドニアなど先に候補国となりながら、まだ加盟が認められていない国々がある。EUは法の支配の徹底や組織犯罪・汚職対策などを加盟の条件に慎重に交渉を進めてきた。加盟交渉は少なくとも数年はかかるのが一般的だが、ウクライナに特例を与えれば、ほかの候補国から不満が出たり、加盟基準が形がい化したりする恐れもある。新規加盟にはEU27カ国すべての承認が必要だが、現時点ではEU内の慎重論も根強い。

 オランダのメディアによると、オランダのルッテ首相は2月28日、現時点でウクライナ加盟を「議論するのは良くない」と指摘した。フランスも慎重派とみられ、仏大統領府高官は「守れない約束をしないよう注意すべきだ」と語る。

 欧州議会でゼレンスキー氏の後に登壇したミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は「(ゼレンスキー氏による)正当な要求を真剣に検討する必要がある」と述べた。しかし、同時に「それは難しいだろう。欧州にはさまざまな意見がある」とも語った。

 ウクライナの加盟問題は、3月10日から予定されるEUの非公式首脳会議で議題となる可能性がある。【ブリュッセル岩佐淳士、パリ久野華代】

毎日新聞 2022/3/2 04:57(最終更新 3/2 05:09) 1208文字
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