政府は3日、首相官邸で経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)を開いた。首相は夏にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「人への投資」の強化策を盛り込むと表明した。内閣府は1994年から2019年までの所得構造の変化を分析した。首相は「25年間で働き盛りの世帯の所得が100万円以上減少している」と指摘した。

内閣府は相対的に所得が低い若者の単身世帯や高齢者世帯が増えていると報告した。首相は「ライフステージに応じたきめ細かな人への投資に取り組む」と強調した。

諮問会議の民間議員は「人材育成、子育て支援、働き方改革を一体として進める必要がある」と訴えた。首相は野田聖子少子化相に女性の活躍推進や子育て世帯への支援策など包括的な対策をまとめるよう指示した。

諮問会議で民間議員は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ政府の水際対策に関し「一日も早く国際的な水準に戻すことが重要だ」と緩和を急ぐよう提言した。

政府はコロナ対策の一環で1日の入国者総数を制限している。民間議員は空港での検査体制の拡充や3回目のワクチン接種を終えた人は検査や待機の免除を検討すべきだと訴えた。

民間議員は「国際的なビジネス往来の遅れや外国人労働力の不足などは、日本経済の将来にとって大きなダメージとなる恐れがある」と指摘した。

ウクライナ情勢の緊迫化を受けて原油をはじめ原材料価格の上昇が続いている。家計の購買力を高めるため「賃上げに向けた機運を官民協働で拡大すべきだ」と要請した。ガソリン価格の高騰対策と同時に「脱炭素社会の構築に向けた攻めの官民投資を大胆に加速すべきだ」と強調した。

首相は3日の諮問会議で、ウクライナ情勢を踏まえ「穀物、エネルギーなどの国際商品市況を含めて足元の経済動向を引き続き注視し、国民生活や日本経済への悪影響を最小限に抑える必要がある」と語った。

日本経済新聞 2022年3月3日 21:23
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