新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が18都道府県で再び延長される方向になった。全国の新規感染者数はなお1日7万人前後と高水準で、政府の対策はオミクロン株の抑え込みに十分な効果を発揮していない。岸田文雄首相は「第6波の出口に向かって段階的に準備を進める」と制限の緩和を模索するが、流行が収まらないまま「第7波」を迎える懸念があり、社会経済活動との両立も展望が開けない。(柚木まり、曽田晋太郎)

 首相は3日の記者会見で「第6波の出口がはっきり見えてくれば経済社会活動の回復へさらなる取り組みを進めるが、悪化の兆しがあった場合には対応を見直す」と強調した。
 全国の新規感染者数は1日公表分から2日続けて前日比で増加。約10万人に上った先月半ばよりは減っているものの、流行が続いている状況だ。
 新規感染者数の高止まりについて、政府分科会の尾身茂会長は2日の参院予算委員会で「ワクチンの3回目接種(の遅れ)も関係ある」と指摘した。政府は高齢者優先の計画を立てたが、昨年12月から今年2月に打ち終えた対象者は6割強。ワクチンでオミクロン株の流行に備えるシナリオは崩れ、今年1月以降の死亡者のうち、60歳以上が全体の9割以上を占める。
 病床使用率などを基に感染状況を判断するレベル分類は、全都道府県で5段階の下から2〜3番目にとどまる。だが、軽症患者を自宅療養にして表面上は指標の悪化を免れているだけで、厳しい医療現場の実態を反映しているとは言い難い。
 国や東京都などの重症化の定義には当てはまらないものの、新型コロナ感染を機に基礎疾患を抱える人が死亡する事例は後を絶たない。一部の自治体では致死率が重症化率を上回る逆転現象も生じている。検査キット不足や治療薬の供給制約は解消されず、政府が対策の三本柱とアピールしていた「予防・検査・早期治療」は機能していない。
 首相は会見で水際対策の一層の緩和を表明。政府は新たな行動制限緩和策をまとめるなど経済を動かす方向にかじを切りつつあるが、感染力がより強いオミクロン株の亜型への置き換わりが進むなどして、第6波の収束前に「第7波に入る可能性」(尾身氏)も取り沙汰される。厚生労働省幹部は「今の山を越えたら(コロナ対応に)めどが付くという確信はない」と話す。

東京新聞 2022年3月4日 06時00分
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