【ロンドン=篠崎健太】英石油大手シェルがロシア産原油の調達を続けていることが明らかになり、波紋が広がっている。同社は5日声明を出し「可能な限り代替先から調達していくが、グローバルな供給におけるロシアの重要性から一朝一夕には実現できない」と釈明した。資源大国ロシアへの経済制裁とエネルギー安定供給をどう両立させるか、難題を突きつけている。

シェルは4日にロシア産原油の購入を決めた。ロイター通信によると売り手は欧州の資源商社トラフィギュラで、国際指標の北海ブレント原油より1バレルあたり28.5ドル安い水準で仕入れる。市場ではウクライナを侵攻したロシアからの調達が敬遠されており、同国の代表的油種「ウラル」と北海ブレントの価格差は過去最高になっている。

シェルは2月28日、ロシア極東の石油ガス開発事業「サハリン2」からの撤退を発表した。ベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)はウクライナ侵攻を「無意味な軍事侵略行為だ」と非難した。国営ガス大手ガスプロムとの他の合弁事業も解消してロシアの資源開発から退く方針を示していた。

ウクライナのクレバ外相は5日、ツイッターに「ロシア産原油にウクライナの血のにおいを感じないのか?」と投稿し、シェルの調達継続を批判した。

シェルは声明で「製油所に原油が絶え間なく届かないと、欧州中の人々に必要不可欠な製品の供給継続が保証できない」と説明した。購入が必要なロシア産原油がもたらす利益は専用の基金に回し、ウクライナの人々を援助するための寄付に宛てるという。

日本経済新聞 2022年3月6日 6:21 (2022年3月6日 6:31更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0603W0W2A300C2000000/