夏の参院選福岡選挙区(改選数3)で、立憲民主党と国民民主党がそれぞれ独自候補の擁立を決め、連合福岡を共通の支持母体とする旧民主党系が割れる見通しとなった。連合福岡は両党を仲介して「何とか一本化を」と尽力したが、「共倒れ」のリスクを抱えて前哨戦に突入。前回の2019年に続く分裂に苦悩を深めている。 (平山成美)

 「これまでになく厳しい」。2月26日。立民現職の古賀之士(ゆきひと)氏(62)は党の公認決定を受けた記者会見で情勢を問われ、率直に危機感をあらわにした。今月19日には福岡市であった別の立民参院議員の集会で「連合の皆さま方とともに、暮らしぶりを少しでもボトムアップしたい」とあえて「連合」の名前にも触れ、自身への支持を求めた。

 古賀氏は16年の参院選に当時の民進党公認で出馬。連合福岡の全面支援を受け、トップで初当選した。立民党本部は2月22日、今夏の参院選でも古賀氏を公認することを決めた。

 だが2日後の同24日、国民党本部は新人で県議の大田京子氏(43)を擁立すると決定した。古賀氏は旧国民の出身で、連合福岡の加盟労組の中でも、特に国民を支援する労組のバックアップを受けてきた。古賀氏サイドの焦りは募る。

 一方の国民はギアを上げる。3月13日には福岡市で開かれた党県連の集会に玉木雄一郎代表が駆け付け、大田氏と並んで「福岡は最重点選挙区の一つ。党本部としても全力で取り組む」と宣言。玉木氏が「新しい野党像を示す」と訴えると、大田氏は「日本をつくるわくわくする作業だ」と意気込んだ。独自候補の擁立は、有権者数の多い福岡で党の比例票を積み上げる狙いもある。

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 連合福岡は、立民、国民両党が古賀氏、大田氏の公認を発表する直前まで分裂回避の道を探った。前回、旧立民の候補は当選はしたものの、自民党と公明党の候補の後塵を拝して3位となり、旧国民の候補は5位で落選。加盟労組が互いに議席を争ったしこりは尾を引き、「あんな選挙は二度としたくない」(連合福岡幹部)とのトラウマが残るからだ。

 連合福岡は昨年末、立民と国民の両県連に対し、古賀氏が無所属で立候補することで一本化する案を提示。「支援組織として度を超えた仲裁」(連合福岡幹部)と自認しつつ、3者協議では「分裂したら両党候補とも推薦しないこともあり得る」と迫った。古賀氏再選が至上命題の立民県連は「無所属」を前提に話し合いのテーブルに着くなど異例の譲歩。古賀氏が国民の集会で「比例は国民」と訴えることまで容認した。

 だが、両党の党本部も巻き込んだ交渉は、仮に古賀氏に一本化して当選を果たせても、その後どちらの党の所属とするかなどを巡って難航。折しも国民は与党寄りの立場を強め、立民とは国政レベルでも溝が深まった。協議は物別れに終わった。

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 参院選福岡選挙区は20年以上、連合福岡の推薦候補が議席を死守している。しかし、次の戦いが目前に迫る中、連合福岡の内部では、「1議席は指定席」との楽観論は日に日に薄れている。

 背景には、前回は擁立を見送り、昨年の衆院選の躍進以来上げ潮ムードの日本維新の会が、候補の選定に入ったことが大きい。共産党も元衆院議員の真島省三氏(59)が立候補を表明。自民現職の大家敏志氏(54)や、比例代表から移る公明現職の秋野公造氏(54)も活動を加速させている。

 「こうなったら古賀、大田両氏の2人当選を目指すしかない。困難なのは分かってはいるが…」。連合福岡幹部の言葉には、悲壮感すら漂う。

西日本新聞 2022/3/22 5:55 (2022/3/22 15:06 更新)
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