(社説)文化の日に あなたの畑の耕し方は
https://www.asahi.com/articles/DA3S15463625.html

2022年11月3日 5時00分

 この日が来ると思い出す人がいる。映画「男はつらいよ」でおなじみのタコ社長だ。近所で油を売っていたが、突如こう言い残して去っていく。「あ、そうだ。博物館に行かなくちゃ。文化の日、文化の日」

 柄にもなくベレー帽をかぶってめかしこんだ姿に、わが身を映す人もいるのではないか。文化の日くらいは、なにかそれらしいことをしなければ、と。

 タコ社長に背中を押され、先月の夜、読書会というものをのぞいてみた。長野市の善光寺近くにある「書肆(しょし) 朝陽館(ちょうようかん)」。明治元年創業の老舗書店だ。20~30代を中心に6人が集まり、宇佐見りんさんが女子高校生家族のせめぎ合いを描いた小説「くるまの娘」の感想を述べ合う。

 「救われる思いがした」人もいれば「読むのがつらかった」人もいて、読後感は割れた。会はそこから熱を帯びる。なぜそう思うのか。見知らぬ他人同士がふだん親しい人にも明かさないような心の内を語りあう。

 「自分の思い込みに気づいた」との声に店主の荻原英記さん(47)は「これがやりたかったんです」とうれしそうだ。経営が厳しく、荻原さんは19年にいちど店をたたんでいる。だが昨年末に再び開業した。

 「アマゾンや活字離れのせいだと甘えていた。まだ本屋にできることがあるのでは」と思ったからだ。改装してカフェを併設。本の選び方も変えると若い客が来るようになったという。

(略)

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