韓国の「ランチフレーション」で見えた格差 富裕層は1食1600円超、契約社員は屋台のカップ

<暮らし@ソウル>
 韓国経済をけん引するIT企業や芸能事務所が集まるソウル江南カンナム地区。昼時には、しゃれた服装の男女が続々とオフィスから出て来て飲食店に向かう。上司が部下たちにランチセットをおごる姿も目立つ。
ソウルで11月8日、カップ飯を若者らに売る韓定希さん=相坂穣撮影

 「韓国の富裕層は見えっ張りが多い。ケチだと見られないように食費をかけ、”ランチフレーション”をあおっている」。外資系企業管理職のキムさん(43)は苦笑した。韓国ではランチとインフレーションをかけた「ランチフレーション」が流行語となっている。
 韓国消費者院によると、ソウルの外食相場は10月に冷麺1杯が1万500ウォン(約1120円)、まぜご飯のビビンバが9731ウォンなどと、1月から10%前後も急上昇した。民間調査では7~9月、江南の大企業社員のランチの平均支出は1万5000ウォンを超えた。
 格差社会の韓国では対照的な風景もある。ソウルの鷺梁津ノリャンジン地区は、公務員採用試験の予備校が集まる街として知られる。名物は屋台で売られる「カップ飯」。発泡スチロールのカップに白飯を盛り、炒めた豚肉や目玉焼き、キムチなどを混ぜて食べる。
 勉強で忙しい浪人生らが立ち食いするB級グルメだったが、最近は会社員もひきつけている。近くで働く契約社員ヒョンさん(26)は「一般の食堂はどこも値上げして1食1万ウォン程度はかかる。ここなら半分以下の価格で腹いっぱい食べられる」とほおばった。
 韓国では不動産高騰が続いてきたが、家賃不要の屋台のカップ飯は値上げが比較的抑えられきた。しかし最近は肉、米、キムチなどの材料やガス電気料金が1~2割上昇した。人気屋台を切り盛りする韓定希ハンジョンヒさん(53)は「経済的余裕がない若者を支えたくて、値上げを我慢している。でも来年は少し上げるしかないかも」と嘆いた。(ソウル・相坂穣、写真も)
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東京新聞 2022年11月16日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/214089