一大旋風だ。現地時間12月6日に行なわれたカタール・ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、モロッコ代表はスペイン代表と対戦。スコアレスで迎えたPK戦を3-0で制し、優勝候補の一角を崩す、大番狂わせを演じた。

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 グループステージでクロアチアとベルギー、そしてカナダといった難敵と互角以上に渡り合い、首位で突破してきたモロッコ。その勢いで、ついには“無敵艦隊”も飲み込んだ。

 この日は図抜けたボール支配力を誇るスペインを前に守勢を余儀なくされた。ポゼッション率23.3%と自陣に押し込まれたモロッコだったが、守護神ボノを中心とした堅牢は、文字通りの猛攻にも動じなかった。そして120分間に渡って牙城を崩されなかった彼らは、全員がキックを成功させたPK戦でモノにしたのである。

 大会初戦で7-0とコスタリカ代表を撃破していたスペイン。もはや詳細を説明する必要がないほど、彼らの攻撃の多彩さは世界でも指折りだが、モロッコは動じなかった。この守備力の安定感に、敵国メディアも脱帽している。

 ガリシア州に拠点を構えるスペインの日刊紙『La Voz de Galicia』は、母国代表の敗退について「最後の25メートルでどうプレーすればいいかを見出せなかった」と強調し、「結果や内容は不公平とは言えない。日本がスペインにボールを持たれても要所でプレッシャーをかけて、決定的な一撃を浴びせるという解毒剤を見出した。今日のモロッコは彼らを完全に真似たスタイルで応戦した」と絶賛。相手がグループステージ3戦目で敗れていた森保ジャパンのスタイルを模倣したアフリカの雄を称えた。

 守備的すぎるがゆえに、多くのサッカーファンが憧れを抱くような戦術ではない。実際、SNS上ではモロッコに「アンチフットボール」と批判する投稿もあった。だが、彼らには敵将も素直に賛辞を送っている。スペインを率いたルイス・エンリケ監督は、試合後の会見でこう言い残している。

「我々は今日勝とうとした。それでも負けたんだ。モロッコのこと(戦術)に文句はつけられないし、つける気もない。世界中の子どもたちにとって、これは美しい試合だった。あの戦い方が好きか、嫌いは別にして、これがサッカーであり、人生なんだ」

 自信をつけ、俄然勢いの増すモロッコはどこまでトーナメントを勝ち上がるのか。センセーショナルな快進撃を見せる彼らに注目だ。

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