岸井ゆきの、主演&ヒロイン8本!2022年「走り抜けました」…聴覚障害のボクサー役で怒涛の1年締めくくる
2022年12月15日 6時30分スポーツ報知

https://hochi.news/articles/20221214-OHT1T51160.html?page=1

 16日公開の映画「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)で主演する女優の岸井ゆきの(30)がこのほど、スポーツ報知のインタビューに応じた。30歳の節目を迎えた2022年は自身のキャリアハイとなった当たり年。多くの話題作で主演、ヒロインを務めたほか、耳の聞こえないボクサー役に挑んだ「ケイコ―」は海外の映画祭でも高く評価された。多忙を極める中でも、根底に流れるのは「生活を表現したい」という気持ちだという。

 岸井にとって怒濤(どとう)の2022年が終わろうとしている。「本当に、本当に走り抜けました」。年始から出演作が絶えることなく、この1年間で主演・ヒロインを務めた作品は実に8本(映画4本、連ドラ3本、舞台1本)にも上る。

 飛躍の年の締めくくりを飾るのが「ケイコ―」だ。実在する聴覚障害のボクサー・小笠原恵子さんの半生に着想を得た作品。静寂の世界で、もがきながらも勝負に身を投じる主人公・ケイコを演じた岸井は「ひとりの人間としての、ケイコの生活と生き方が伝われば」。声を出すシーンはほとんどない。「環境の音や、パンチがミットに当たる音。より音を意識するような作りになっていると思います」

 撮影の3か月前から、週5ペースのボクシング練習に加え、肉体改造にも着手。ボクサーに減量はつきものだが、身長150・5センチと小柄な岸井は「階級に体重が足りなかったので、逆に増量を…」。糖質制限や過酷なトレーニングと並行しての増量は想像を超える苦しさだった。「極限状態で、ケイコのことしか考えられなかった」というギリギリの岸井を救ったのは、三宅監督をはじめとしたスタッフたちの士気だった。

 同作は16ミリのフィルムカメラで撮影。量には限りがあるのでデジタルのように撮り直しがきかず、原則一発勝負だ。「カメラを置く位置や、美しい照明。フォーカスをミリ単位で調整する光景を見たとき、すっごく勇気をもらったんです。ちゃんと狙いを定めれば、私も絶対にこの存在にフォーカスを当てることができると思えた」。現場の集中力が、目を澄ませて戦いに挑むケイコの姿に重なった。

 主演作が何本増えても、岸井の根幹にあるものは変わらない。「生活に基づいたもの、『どこかにこの人たちいそうだな』って感じさせる物語が好き。普通の生活の中って、面白いことが実はいっぱいあるじゃないですか。それを逃さずに、いつか出会う作品に還元できたら」。多忙な中でも先日は数日間の休暇を取り、友人のもとで農業に精を出した。日常のにおいを決して忘れたくはない。

 「ケイコ―」は、世界三大映画祭のベルリン国際映画祭をはじめ、海外で高い評価を受けている。「同じ言語をしゃべらないけど、この地球で生活をしている人たちが、自分の作品をどう感じるのかが知りたかった。すごく可能性を感じています」。日本のみならず、海を越えても「生活」を表現できる役者になることを夢見ている。(宮路 美穂)

 ◆岸井 ゆきの(きしい・ゆきの)1992年2月11日、神奈川県生まれ。30歳。2009年、TBS系連続ドラマ「小公女セイラ」で女優デビュー。17年、映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」で初主演。19年の主演映画「愛がなんだ」で同年度の日本アカデミー賞新人俳優賞。10月期はTBS日曜劇場「アトムの童(こ)」(日曜・後9時)に出演。趣味はフィルムカメラ。