【ソウル=上杉洋司】日韓間の最大の懸案となっている元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題で、原告の弁護士が26日に記者会見し、韓国政府から解決に向けた「有力案」として、韓国の財団が日本企業の賠償を肩代わりする案について説明を受けたと明らかにした。韓国政府が、原告側に具体的な解決策を示すのは初めてとなる。


 弁護士によると、韓国外交省の担当者と今月20日に面会した際、韓国政府傘下で元徴用工らの支援事業を行っている「日帝強制動員被害者支援財団」が、三菱重工業や日本製鉄など被告の日本企業の代わりに、原告に賠償金相当額を支払う案を示された。資金を拠出するのは韓国企業だけで、被告の日本企業は参加しないとの説明を受けたとしている。

 元徴用工問題では、韓国の大法院(最高裁)で2018年、日本企業に対し賠償を命じる判決が確定。日本企業の韓国内資産を差し押さえて売却する「現金化」の手続きが進んでいる。

 5月に発足した 尹錫悦ユンソンニョル 政権は、日韓関係の早期改善を目指し、財団に肩代わりさせる方法で問題の解決を図ろうとしてきた。これに対し、原告側は、被告の日本企業の参加や、日本政府の謝罪を強く求めてきた。尹政権は、被告の日本企業の参加は困難とみて、原告側に案を提示したとみられる。

 弁護士は記者会見で、今回の案に対し、「強い反対」を表明した。

 日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長は26日、来日した韓国外交省の 徐旻廷ソミンジョン アジア太平洋局長と外務省内で会談し、元徴用工問題について協議を継続していくことで一致した。

 外務省は、日韓が11月の首脳会談で懸案の早期解決を図る方針で一致したことを踏まえ、両氏が「元徴用工問題を含め日韓関係全般について率直な意見交換を行った」としている。

読売新聞 2022/12/26 21:21
https://www.yomiuri.co.jp/world/20221226-OYT1T50187/