大石航樹
公開日 2023/1/29(日)
参考文献
Study: Some Tropical Pitcher Plants Capture Mammal Droppings
https://www.sci.news/biology/tropical-pitcher-plants-mammal-droppings-11582.html
Eating poo is a super effective way for carnivorous plants to get their nutrients
https://cosmosmagazine.com/nature/carnivorous-plants-scat-pitcher-tree-shrew/
Why Tree Shrews Lick the Inside of Their Toilet(2017)
https://sites.evergreen.edu/plantchemeco/why-tree-shrews-lick-the-inside-of-their-toilet/
元論文
Capture of mammal excreta by Nepenthes is an effective heterotrophic nutrition strategy
https://academic.oup.com/aob/article/130/7/927/6779531

ウツボカズラは、コップ状の葉の底に溜まった消化液で虫を溶かし、栄養分を吸収する食虫植物です。

ところが、東南アジアの高地に生息するウツボカズラは、餌となる昆虫の数が少ないために動物の排泄物から養分を摂取しているというのです。

「食料がなくて動物の糞を食べているなんて可哀想に…」と思ってしまいますが、実は私たちの想像と状況はまるで違うようです。

豪カーティン大学(Curtin University)、ビクトリア州王立植物園(RBGV)の研究により、フン食のウツボカズラは普通の昆虫食のウツボカズラに比べて、栄養状態が優れていることが判明したのです。

この種は主要な栄養素である「窒素」の獲得量が通常種より2倍以上も多かったとのこと。

研究の詳細は、2022年10月28日付で科学雑誌『Annals of Botany』に掲載されています。







ウンチを養分に変える「森のトイレ」?

植物は一般に、根っこを通して土から窒素や炭素などの栄養分を取り込みます。

しかし、土壌が痩せていたり栄養分に乏しい場所だと、植物はまともに生きていけません。

そこで捕獲した昆虫から栄養素を摂取する「食虫植物」が進化してきたのです。

その中でも代表的なウツボカズラ属(Nepenthes)は、東南アジアの熱帯雨林に広く分布し、丸く膨らんだ捕虫袋を最大の武器とします。

フタに当たる葉っぱから分泌された蜜で昆虫を誘い、寄ってきた虫たちが足を滑らせて捕虫袋に落ちると、底に溜まった消化液で溶かして栄養分を吸収するのです。

ところが、ボルネオ島の高地に分布するウツボカズラの中には、キネズミ(treeshrew)の落としたフンから栄養素を摂取する種がいくつか存在します。

この事実が最初に発覚したのは2009年のことで、ウツボカズラに寄ってきたヤマツパイ(mountain tree shrew)の観察から判明しました。

ヤマツパイとは、登木目(Scandentia)に分類される小型哺乳類で、東南アジアの熱帯雨林に生息し、樹上性で細身のリスのような見た目をしています。

彼らは頻繁にウツボカズラを訪れ、フタ状の葉っぱの蜜を舐めとった後、捕虫袋の穴の中にウンチをしていくのです。

その見た目や形状から、ウツボカズラをトイレだと思っているのかもしれません。

さらにその後の調査で、コウモリやメグロメジロといった鳥類も同様の行動を取ることが分かりました。

     ===== 後略 =====
全文は下記URLで

https://nazology.net/archives/120931