10年前に長崎県対馬市の観音寺から盗み出され、韓国へ持ち込まれた仏像の所有権をめぐる訴訟の控訴審判決が1日、韓国の大田(テジョン)高裁であった。一審判決は、韓国にある寺の「(自分の寺から)14世紀に倭寇(わこう)に略奪された」との主張を認めたが、高裁では一転して退けた。

 仏像は長崎県の指定有形文化財「観世音菩薩坐像(ぼさつざぞう)」。2012年に盗まれ、13年に韓国で容疑者の韓国人グループが検挙されたため、韓国政府側が保管することになった。

 ただ、観音寺や日本政府が返還を求めるなか、韓国中西部の忠清南道にある浮石(プソク)寺が「14世紀に略奪された」として所有権を主張。韓国政府に引き渡しを求めて提訴した。一審判決では「盗難や略奪によって観音寺に渡ったとみるのが相当」と浮石寺の主張が認められたため、韓国政府が控訴していた。

 昨年6月の控訴審での口頭弁論では、観音寺の田中節竜住職が渡韓して出廷。1526年に寺を建てた僧侶が朝鮮半島に渡り、翌年に対馬に戻る際に「仏像を譲り受けたと言い伝えられている」と訴えていた。

 控訴審判決を受けて韓国の浮石寺は、大法院(最高裁)に上告するとみられる。(大田=鈴木拓也)

朝日新聞 2023年2月1日 14時35分
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