弁護士JP編集部
2023年02月22日 09:58

数年前の12月23日、当時の天皇陛下(現在の上皇陛下)の顔写真にハートマークや「HAPPY BIRTHDAY」の文字をデコレーションした画像を添えて「あんまり絡んだことないけど おめでとっ!!」と投稿したTwitterアカウントが物議を醸した。
投稿主は女子高生だったと見られており、プリクラなどと同じ感覚で画像をデコレーションしたのではないだろうか。投稿には「愛がある」「かわいい」といった好意的なコメントがついた一方、「不敬罪だ」などと批判するコメントも多く寄せられた。




天皇誕生日をSNSでお祝い「不敬罪ではない」

前提として、日本において「不敬罪」はすでに廃止された法律だ。天皇をはじめとする皇族や、そのお墓である皇陵などの名誉と尊厳を守るための法律として、明治13年(1880)公布の旧刑法に初めて登場し、明治40年(1907)公布の現行刑法に引き継がれた後、戦後に廃止されている。
現在はSNSやネットニュースのコメント欄などで、時折目にする言葉ではあるが、天皇陛下の写真をかわいくデコレーションしたり、SNSに“おめでとう投稿”したりすることは、いわゆる「不敬行為」に当たるのだろうか。くだんの投稿を見た皇室研究者・高森明勅氏は「不敬行為ではないですね」と言う。
「不敬罪は『皇室に対する配慮が欠けていた』場合に問われる罪だと誤解している方がいるのですが、実際には『皇室の名誉を傷つけるためにわざと侮辱を与えた』など、能動的な攻撃意図がある場合に問われる罪でした。
お見せいただいたかわいらしい画像は、わざと攻撃しようとしているのではなく、むしろ天皇陛下に対して親愛の情を抱き、ある種の敬いも感じられ、『能動的に陛下をおとしめよう』などという意図がないことは一目瞭然です。もし現代に不敬罪があったとしても、該当する事案ではまったくありません。
かえって現代においては、こういうものに対して『不敬罪だ』と騒ぎ立てることが、『皇室は怖い』『報復される』などという、皇室の方々がまったく望んでいないイメージを拡散することにつながってしまいます。私は、そちらの方が憂慮すべきなのではないかと思います」(高森氏)





“政治利用”が多かった不敬罪
https://www.ben54.jp/news/331