福岡県の筑紫野太宰府消防本部(筑紫野市)で、幹部らが119番通報に備えて待機していた消防署の救急隊員に、勤務を離れて公用車を運転し、式典の送迎をするよう命じていたことが、同本部への取材でわかった。このため同署の救急隊の運用が約30分間止まって近くであったけが人の救急搬送に対応できず、別の消防署の救急隊が出動していた。

 同本部によると、昨年11月6日、同本部の消防長と次長、筑紫野消防署長の3人が、午後から約1キロ離れた市文化会館であった市制50周年の式典に出席する際、公用車を運転して3人を送迎するよう署の男性救急隊員に命じた。隊員が本来の勤務を離れて送迎役をしたため、救急車の運用が計約30分間停止した。

 午後0時17分ごろ、署の近くで「男性が転倒してけがをした」との通報があったが、署の救急隊2隊のうち、隊員が送迎に充てられた救急隊は出動できず、もう1隊は別件で出動中だった。やむなく署から約4キロ離れた太宰府消防署の救急隊が現場まで駆けつけたという。男性は医療機関に搬送されたが、軽傷だった。

 当時は日曜日で事務職員らがおらず、幹部らは会場が近く、短時間だったので救急隊の運用を止める判断をしたという。山宮義浩・消防長は「救急隊の運用を止めたのは間違いだった。誤った判断で心からお詫(わ)び申し上げる」としている。(小川裕介)

朝日新聞 2023/3/1 20:30
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