「朝鮮学校に官製ヘイト」 「国制度から排除 後付けの理由」 元文科次官の前川さん訴え さいたまで講演

 国や自治体が朝鮮学校の子どもたちを差別するのは、「官製ヘイト」である?。そんなテーマを掲げて元文部科学次官の前川喜平さん(68)が語る講演会が先月、さいたま市内で開かれた。市民団体「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉」の主催。約百三十人が臨場感あふれる話に聞き入った。(出田阿生)
 冒頭で前川さんは「日本では、差別をあおる言動を国が率先して行っている。それを私は官製ヘイトと呼びます」と語った。自身が文科省官僚の時に始まった高校無償化から朝鮮学校が排除された過程を、時系列で説明。「権力者が朝鮮学校へのヘイト感情を持っている。制度から排除するという結論が先にあり、後から排除するための理由をつくっている」と断じた。
 二〇一九年実施の幼児教育・保育の無償化からも朝鮮学校の幼稚園は除かれた。コロナ禍で困窮した学生への「学生支援緊急給付金」制度からも、朝鮮大学校は除外された。「外国人留学生、外国大学の日本校や日本語学校の学生も支給対象になったのに。これもまさにヘイトといっていいと思う」と前川さん。
 こうした「官製ヘイト」の源流として、領土拡大を説いて明治維新の理論的支柱となった吉田松陰の思想を挙げた。「自分たちの民族が最も優秀だと信じる考えが、侵略戦争や植民地支配につながった。そんな大日本帝国の『栄光』を引きずる政治家が今も大勢いて、戦前へ戻そうという強い動きがある」
 現政権の政策については「ありったけの財源を防衛費につぎ込んで、子どものための予算に使うお金はどこにあるのか」と疑問視。出生率が低下し続ける中で「日本は移民を受け入れて多文化多民族社会を目指すしかない。いろいろなルーツの人が生きる社会になっていくのだから、朝鮮学校への差別をなくさないことには、社会全体の外国人差別もなくならない」と訴えた。

東京新聞 2023年3月7日 07時31分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/235049?rct=saitama