放送法の「政治的公平」の解釈を巡り、第2次安倍晋三政権下の首相官邸と総務省の間のやりとりが記された行政文書について、12日放送のTBSの「サンデーモーニング」で、司会の関口宏さんや出演者が当時の政権の姿勢を批判した。総務省が一連の文書を7日に「行政文書」として認めたのを受け、番組がこの問題を取り上げた。【デジタル報道センター】

 文書によると、当時の礒崎陽輔首相補佐官が「サンデーモーニング」を名指しし、「コメンテーター全員が同じことを述べている」と指摘した。安倍氏は「極端な例をダメだというのは良いのではないか」と礒崎氏を援護し、「ただすべきはただす」との立場を示したという。


 12日の番組で、司会の関口さんは「当時の権力者たちが、メディアというものの解釈をどこか間違っていたんじゃないかなという気が僕はしています」と発言した。

 この日の番組に出演したジャーナリストの青木理さんは「時の政権幹部が報道を取り締まる必要があるという発想は、憲法が禁じる検閲になる」と指摘した。また、「時の政権幹部がこういうことを言うということは、いったい我々の社会に何をもたらすかということだけは、ちゃんと考えないといけない」と訴えた。


 フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは「公権力を追及・批判・監視するメディアの存在は、公権力者にとって不都合になり得る。問題は、不都合だとみなしたメディアを正せる立場にあると思い込んでいる権力者側の認識そのものではないか」と述べた。

 藪中三十二・元外務事務次官は「G7(主要7カ国)の中で、政府の政策についてクリティカル(批判的)な見方をするのがメディアの役割と言われている。そういうグローバルスタンダードから見ても、ちょっとこれはいかがなものかと思う」と述べた。

 田中優子・法政大名誉教授は、礒崎元首相補佐官が「コメンテーター全員が同じことを述べている」と指摘した点を取り上げ、「コメンテーターは、それぞれ職業も経験も異なり、おっしゃることの角度や言葉、表現も違うはずだ」と反論した。その上で「同じだという根拠は述べていないのにそう感じたということは、頭の中が『自分と同じ意見』『自分と違う意見』を入れる二つの引き出しでできているからではないか。自分と違う意見は全部同じに聞こえるということではないか」と痛烈に批判した。

毎日新聞 2023/3/12 12:03(最終更新 3/12 12:03) 972文字
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