聞き手・丹内敦子2023年3月20日 9時30分

 フランスで100万人を超える人たちが怒っています。「フランスを停止させる」と抗議し、相次ぐストライキで鉄道の運行やごみ収集など市民生活に影響が出ています。怒りの原因は「年金制度の改革」。なぜ市民はこれほどまでに怒るのか、改革の中身はどんなものなのか、第一生命経済研究所のエコノミスト田中理さん(48)に聞きました。

 ――マクロン政権は16日、国民議会(下院)の採決を経る方法ではなく、憲法の特例規定を使って年金改革に関する法案を成立させることにしました。

 フランスの議会は二院制で上院と国民議会があり、基本的には国民議会の決定が重要です。国民議会で賛成が得られなくても法案を成立させられる特別な方法が、憲法49条3項(49・3)です。ただし、いくつか制約があります。予算関連でない法案には1会期に1回しか使えません。

 今回の年金改革法案は49・3を使うことも見越して、予算関連の法案の体裁をとっています。ちなみに議会で採決し、否決された後に同じ法案に49・3を使うことはできません。

 ギリギリまで説得交渉をしたようですが、このまま採決すると否決される恐れがあると判断したのでしょう。マクロン大統領が内政で最も重視する法案が否決されたらレームダック状態になります。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR3M3K0PR3LUHBI01P.html