2025年に予定される次期年金制度改正の議論が、政府・与党で本格化している。厚生労働省社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会が今春から実質的な検討に入ったのに続き、自民党の関係委員会も13日から始動。少子高齢化の進展に伴う給付水準の低下に歯止めをかけるため、国民年金(基礎年金)の保険料納付を65歳まで5年延長することなどが焦点になる。
◆厚生年金の対象拡大案…中小企業など負担増に理解得られるか
 自民党社会保障制度調査会の年金委員会が13日に開いた会合では、厚労省の担当者から制度の現状や課題についての説明を聴取した。宮沢洋一委員長は「(制度の)ほころびが若干見えている部分もある。しっかりと議論して、新たな制度作りをしていきたい」と語った。
 国民年金の保険料納付期間延長に関しては、給付水準の低下幅が抑制され、現行制度を維持するのと比べて受け取る年金額は増える。だが、代わりに5年間分の新たな負担が生じるため、加入する自営業者らの反発も予想される。国民年金の2分の1は税金で賄う仕組みになっており、新たに必要となる財源をどう確保するかも論点になる。
 厚生年金の加入要件を見直し、これまで対象外だった短時間労働者などに広げることも検討する。ただ、保険料は労使折半のため、資金面の余裕が乏しい中小・零細企業の理解を得られるかが課題となる。パートの主婦などが保険料負担の発生を避ける目的で働く時間に上限を設ける「年収の壁」問題への対応や、育児期間中の国民年金保険料の納付免除なども主要なテーマだ。
 政府は5年に1度、将来の年金水準の見通しを示す「財政検証」を行い、その結果を踏まえて制度を見直す。今回は24年夏に財政検証を実施し、25年の通常国会で関連法改正を目指す。(井上峻輔)

東京新聞 2023年7月14日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/263030