来年4月から始まる「医師の働き方改革」によって、地域の医療に影響が出てきた。大学病院から派遣されていた地域の医師が引きあげられている。長時間労働が常態化した医療現場で、医師の労働時間を大幅に減らすのは簡単ではない。医師の健康を守ることと、患者の命を守ることは両立できるのか。(枝松佑樹)

 地域医療は、大学病院からの派遣医師に支えられている面が大きい。医師の足りない病院から要請され、大学病院は、より多くの患者を診ることで標準的な診療技能を身につけられることなどから応じてきた。

 国立大学病院長会議によると、全国の42国立大学病院は2022年度、のべ9628カ所の医療機関に勤務医を常勤や非常勤で派遣した。

 1大学病院あたり平均229カ所で、最多が東京大の785カ所、最少が徳島大の98カ所だった。東京大や九州大など都市部の大学病院は、県境を越えて遠方にも派遣していた。

 ただ、来年4月以降、時間外労働は大学病院だけでなく、派遣先の分も加えて年960時間に規制される。高度な医療を担う大学病院は、自らの機能を維持するため、医師の数を増やして1人当たりの労働時間を減らそうとする。時間外労働の削減と要員確保の両面から、医師派遣の中止や削減につながっている。

 大学病院は、診療だけでなく研究や教育の機能もあわせ持つため、長時間労働になりがちだ。特に産科や外科、救急科など、もともと人手が足りない診療科ほど影響が出やすい。

産婦人科医持つ大学病院の5割「派遣制限する可能性」 
 22年発表の日本医師会の調査によると、医師派遣をしている産婦人科をもつ63大学病院のうち、約5割が派遣を「制限する可能性がある」と回答し、「制限する可能性はない」と答えたのは約1割にとどまった。

 派遣医師の引きあげではなく…(以下有料版で、残り1522文字)

朝日新聞 2023/7/15 17:30有料記事
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR7H5F67R74UTFL00R.html?iref=sptop_7_05