0001蚤の市 ★ [KR]
2023/07/19(水) 06:41:38.04ID:Q4dKdjwK9＜医療の値段 環流する票とカネ＞(2)
◆5000万円献金の2カ月後に会食
2021年11月末、東京都内。自民党副総裁の麻生太郎は、日本医師会（日医）の2人の会長経験者と会食していた。
当時会長の中川俊男と前任の横倉義武。22年度診療報酬の改定率を巡り、引き上げを主張する厚生労働族や日医側と財務省との攻防が続いていた。
「飯を食ったのは事実。でも、その時に（診療報酬の）話が出たって記憶はまったくないねえ」。国会内で麻生はそう振り返った。
横倉も周囲に「中川さんが麻生さんと一度飯を食べたいというので、麻生さんに頼んでなごやかに食べただけ」と話していた。
日本医師連盟（日医連）と関連団体が麻生派へ計5000万円の破格の献金をしてから約2カ月後のこと。会食の席で、献金の話が出ることもなかったという。
その後、横倉が動く。日医関係者によると、首相の岸田文雄（65）に近い「官邸のある人物」に、改定率アップを要請したのだった。
◆「横倉超えはするな」
22年度改定には二つの「首相案件」が織り込まれた。岸田が掲げた看護師の賃上げと、前首相の菅義偉が打ち出した不妊治療の保険適用で、当初から診療報酬を0.4％押し上げることになった。さらに上乗せを求める日医にとって大きな壁になったのが「横倉超えはなし」という麻生の強い意向だった。
「横倉超え」とは、横倉が日医会長時代の4回の平均改定率0.42％を超えることを指す。21年度の国民医療費は概算で44兆円。0.42％は約1850億円となる計算だ。麻生に近い国会議員は「麻生さんは『絶対に上げない』とすごかったよ。よく『横倉超えはするな』と言っていた」と振り返る。
では、横倉はどのように引き上げを要請したのか。日医関係者が証言する。
「看護師の賃上げと不妊治療で0.4％だから医科だけで全部使い切ってしまい、歯科と調剤に回る金がなくなってしまう。それじゃ、（政府も）まずいでしょうと話をした」
結局、薬の処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の導入などで、0.2％の引き下げが生じ、差し引きプラス0.2％に0.23％を上乗せして決着した。
◆医療逼迫と、増え続ける国民負担
財務省が主張した0.3％台前半を上回り、わずかとはいえ横倉超えも実現し、会長として初の改定に臨んだ中川は胸を張った。決定は「岸田裁定」といわれ、翌年夏に参院選を控え、政権が自民党の有力支持団体である日医に配慮した側面があるとされた。
中川も昨年の退陣表明会見で、この時のことを振り返り、「最後には岸田総理から『改定率、これでいいか』とお電話を頂いた。総理のご配慮に、今も本当に感謝している」と話した。
ただ麻生の話では、プラス改定の立役者は横倉となる。「財務省がダメといっている話を横倉さんもダメといったら、上がらなかったことは確かだろう。横倉さんが（横倉超えを）いいって言うなら、『しょうがないな』という気になったのは確かだ」
改定率が決まる約1カ月前の政府の経済財政諮問会議。新型コロナウイルス禍で、病院にかかれずに在宅死する患者が続出したこともあり、岸田は「メリハリある診療報酬改定や医療提供体制の整備など、着実に改革を進め、社会保障の質を上げ、国民負担の軽減を目指す」と強調した。
だが、言葉とは裏腹に脆弱ぜいじゃくな体制は解消されず、感染拡大のたびに医療逼迫ひっぱくを繰り返した。一方、票とカネを背景にした日医連の政治力により、診療報酬は8回連続で引き上げられ、国民負担は増え続けることになった。（文中敬称略）
国民医療費 病気やけがの治療で、医療機関に支払われた総額。2020年度は約43兆円。高齢化や医療の高度化で、30年間で倍増した。財源別では、公費（税金）が約38％、保険料が約50％、患者負担は約12％となっている。1人当たりでみると、65歳未満は18万3500円、65歳以上は73万3700円
東京新聞 2023年7月19日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/263938
