保安検査場の混雑解消に向け、国は有資格警備員の配置基準緩和の試行を始めた。混雑原因の人手不足は新型コロナウイルス流行を受けての警備員の大量離職が発端だが、復職が進まない背景には保安検査の実施体制や警備員の契約形態など日本特有の事情もある。

 国土交通省によると、全国の空港で警備業務に従事する保安検査員(無資格者を含む)は、2020年4月で約7400人いたが、コロナ禍で23年4月には約5700人に減った。一方、配置が義務付けられている「空港保安警備業務検定1級」の資格者はコロナ前より増加。警察庁によると、1級資格者は18年が3457人で、21年に3949人まで増え、22年も3783人いた。
 復職が進まない理由として指摘されるのが、給与水準の低さだ。国交省のまとめでは、平均年収は約374万円で、空港業務の他の職種より低い。業界関係者は「日本特有のいびつな契約構造が背景にある」と話す。
 日本では航空会社が保安検査の実施主体で、各航空会社が個別に警備会社と委託契約を結び、委託費の中から警備員に給与が支払われる。委託費は航空会社と空港管理者が折半している。
 空港管理者の負担分は、国管理空港では航空会社から徴収した保安料が、会社管理空港では旅客から徴収したサービス料がそれぞれ原資となる。こうした背景から航空会社の一存では委託費を上げられない。
 海外では国や空港管理者が保安検査の実施主体で、実務は検査会社が担うことが多い。費用は英仏は旅客から、独豪は航空会社から徴収した料金で全額を賄う。
 国交省の有識者会議は今年6月、保安検査の実施主体を現行の航空会社から、空港管理者に移行することを提言した。25年以降の運用開始を目指すとしている。

時事通信 2023年07月30日07時17分
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