2023年の統一地方選では、統一教会の問題がありながら、自民党は負けもしなかったが、勝ちもしなかった。問題はだらだらと先送りされ、国民も関心がなくなり、うやむやに…。このパターンでいくつもの政治危機を乗り切ってきた。一方、地方議会だとイデオロギー的な対立が前面に出ることはあまりない。白井聡氏と内田樹氏の新著『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』(朝日新書)の中では、今後の国政を変えていく足掛かりについて、対談形式で述べられている。同著から一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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■地方政治から変えていく

内田樹(以下、内田):2023年の統一地方選では自民党の議席ががた減りすると僕は予測していました。今回は統一教会の選挙応援が当てにできませんから、これまで当落ラインぎりぎりのところで下位当選していた自民党の地方議員たちは、落選する可能性が高いと読んだんです。統一教会問題にきちんと対応しなかったから有権者が離れたという総括になるのかなと思っていたんですけど。

白井聡(以下、白井):結局、解散命令などもないまま、ひどくうやむやなかたちで統一地方選は終わり、自民党は勝ちもしなかったけれども、負けもしませんでした。

内田:あらゆる問題がそうなんですけれども、解決を先送りしてだらだらしているうちにメディアが報道しなくなり、国民も関心をなくして、うやむやになる……というパターンで自民党はいくつもの政治危機を乗り切ってきた。統一教会についてもやることは同じだと思います。だらだら先送りしているうちにうやむやになる。

白井:田舎になればなるほど政治の世界は一種の利権共同体です。つまり、与党も野党もない。形式的にはあったとしても、だいたいみんな地元の仲間だから、そんなにひどい喧嘩をするわけにもいかないのです。

内田:地方議会だとイデオロギー的な対立が前面に出ることはあまりないですね。同じ共同体のメンバーですから。

白井:だからそこそこのところで利害調整をしますよね。いわゆる相乗りです。「みんな仲間だよね、敵対していないよね」と確認して、あとはそれなりに調整していく。それが地方政治の基本です。問題は、どんどんリソースが減ってくるなかで、調整していればよいという状況ではなくなってきたことですよね。

内田:地方政治は知事や市長が大きな権限を持っていますから、知事・市長個人の人格見識が、そこで暮らす人たちの生活の質にダイレクトにかかわってくる。僕はここ数年ある県の知事と定期的に会って県政へのアドバイスのようなことをしています。僕と哲学者の鷲田清一さんが二人で知事に提言をするというかたちなんですけれど、知事が僕たちの提言を真剣に検討してくれるチャンネルがあるのはありがたいです。

白井:それは素晴らしいですね。提言がどう政策に反映されるかが見物です。

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9/25(月) 16:32配信   AERA dot.
https://news.yahoo.co.jp/articles/a1848d5b209ca13323625ffd3407ad07b465055b