日韓両政府内で、2025年の終戦80年に合わせ、新しい共同宣言を模索する動きが浮上している。岸田文雄首相と尹錫悦大統領の良好な関係を追い風に、具体的な協議の進展を目指すが、内容を巡り日韓間の対立が再燃する危うさもはらむ。

 1998年の「日韓共同宣言」から10月8日で25年を迎える。韓国の尹徳敏駐日大使はこれに先立つ9月27日の講演で、日韓首脳による新宣言の必要性に言及。「来年や再来年に尹大統領と岸田首相の間でできれば一番いい」と訴えた。
 尹大使の発言について、日本側は「まだ具体的な話は出ていない」(関係者)としつつも、前向きに受け止めている。外務省幹部は「日本が拒む理由はない。80年はいいタイミングだ」と指摘。25年に尹大統領を国賓として招く案も取り沙汰される。
 新宣言を取りまとめる場合、テーマ設定が焦点となる。98年の宣言は、日本の植民地支配に対する「痛切な反省と心からのおわび」を明記し、歴史認識を巡る対立に一定の決着を図った。
 日本側は「新宣言で歴史認識には踏み込まない」(外務省関係者)との見方を示す。尹大統領は、歴史問題への言及を控えて未来志向を標ぼう。岸田首相との首脳会談は、直近の半年で6回に及んでおり、政府関係者は「尹大統領となら良い文書が作れるだろう」と期待する。
 ただ、韓国の歴代大統領の中には、国内での求心力を維持するため、5年の任期後半に「反日」へ転じる例があった。来年4月に控える総選挙の結果によっては、新宣言で歴史認識への言及を求める声が強まることも予想される。
 慰安婦や島根県の竹島(韓国名・独島)などの問題に改めて注目が集まる可能性もある。政府関係者は「尹大統領が謝罪を望まなくても、不確定要素はある」と不安を口にした。

時事通信 2023年09月30日13時31分
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