「最高益」なら還元しろ! アメリカのトラック・ドライバーは年収2500万円へ(今野晴貴) - エキスパート - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/76851c660452b95708f5725254dcc8e2595a650c

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

11/24(金) 9:35

 日本の物流が「危機的」状態にあると言われている。ラストワンマイルを担う配達員から長距離トラックドライバーまで物流業界での人手不足が深刻化してきただけでなく、2024年4月からはドライバーにも残業時間の上限規制がかけられることでさらにその問題が深刻化すると予想される。

 そもそもトラックを始めとするドライバーの人手不足は、あまりに劣悪な労働環境に起因している。以前の記事でも紹介したが、トラックドライバーの給与は全産業平均よりも5~10パーセント下回っているにもかかわらず、年間労働時間は全職業よりも400時間も長い。

 長時間労働で給料が低ければ、その業界で働きたい人が少なくても何ら不思議ではない。同じように、介護といった人手不足の職場では仕事の苛酷さのわりに賃金水準が低いことが敬遠材料になっている。

参考:外国人ドライバーは「救世主」となるのか? アメリカでは「年収2500万円」も
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/914ee4ab7c9a4d434059f88814ed778235f01260

ところが、日本のほとんどの議論では、賃上げは「解決策」とされていない。例えば、荷下ろし待ちの時間短縮のためのテクノロジーの導入や高速道路の速度規制緩和といった話ばかりが繰り返されている。果ては、万博対策でむしろ労働時間の延長を政策的に進めることで、人手不足を打開する案さえ出されている。

参考:大阪万博は、もはや「災害」? 過労死の危険を無視した「強硬策」は問題だらけ
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6e71efb200257689b5ff35d2261af04c029bf059

 そうしたなかでアメリカ最大の物流企業のひとつ、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)のドライバーや倉庫労働者は今年7月に、ストライキ突入直前で会社労働協約を妥結した。その中で、もっとも賃金水準が高いフルタイム労働者に関しては、5年間で200万円以上の賃上げを会社に約束させている(それまでも平均で年収2200万円)。

 今回の記事ではUPSのドライバーへのインタビュー調査を通じて、物流における労働条件の改善について考えていきたい。

オンラインショッピングによる物流量の増大と実質賃金の低下

 今年7月に世界的にも大きな話題を呼んだ労働争議の主役となったのは、アメリカの物流労働者を組織する労働組合チームスターズと、その組合員でUPSで働く約35万人の労働者である。日本と同様にアメリカでもアマゾンを始めとするネットショッピングの拡大により宅配便取扱個数は増えており、2019年の取引量が154億個だったのが、2022年には212億個まで増加している

Study: US annual parcel shipping volumes to grow 5% through 2028
https://www.freightwaves.com/news/study-us-annual-parcel-shipping-volumes-to-grow-5-through-2028

 そして、UPSはアメリカの民間物流企業の中では最大手であり、アメリカ国内で宅配される荷物の4分の1にあたる1日あたり2430万個を担っている。

参考:How likely is a UPS workers strike and how would it affect shipping?
https://www.theguardian.com/us-news/2023/jul/14/what-if-ups-workers-strike-shipping-delay-why

 それに伴い会社の総収入は、2020年の約846億ドル(約13兆円)から2022年には約1003億ドル(約15兆円)と急増している。その一方で、労働者の働く環境はむしろ悪化していった。増加する荷物量に対応するために繁忙期には週6日勤務することもあり、1日あたり14時間働くこともしばしばあったという。それでも給料は時給で時給15.50ドル(約2300円)と、特にインフレ化においては生活賃金には程遠い。

 カリフォルニア州サンディエゴのUPSのドライバーであり、チームスターズの組合員でもあるジョー・アロー氏はわたしたちの取材に対してこう答えている。

(略)

※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。