2024/1/4 11:10





国保から墓場まで㊦

イスラム系の土葬墓地をめぐっては地域住民との軋轢も生じている。







遺体に遺体を重ねる

大分県日出町では、九州で初となる計画に水質汚濁や風評被害を理由に反対運動が起きた。計画地は名水で知られる湧き水の水源近くにあり、墓地の水が飲用水に流れ込む懸念があった。

町は世界保健機関(WHO)の報告書などを基に影響はないと説明したものの、計画地を近くの町有地に変更。昨年5月にイスラム教徒側と住民の間で合意が成立したが、今度は隣接市の一部住民が地下水の汚染を理由に反対した。

町は「手続き上は進めざるを得ない」として今年中にも全79区画が完成する見込みだが、すべての区画が埋まれば、遺体の上に重ねて土葬する可能性もあるという。

近くに住む町議(74)は「日本人は土葬とは縁遠くなり、正しい埋葬の仕方もよくわからない。将来的には何百体になるか分からず、町の行方が不安だ」と話す。




気の毒で引き受けたが…

埼玉県本庄市の墓地でイスラム教のスリランカ人男性の土葬が営まれた日、同じ敷地内で60代のペルー人男性の埋葬も行われた。宗教はキリスト教だが故人の遺志で土葬を選んだ。ただこれにイスラム教の遺族側からクレームが付き、ペルー人の墓は数十メートル離れた場所に急遽変更された。「異教徒と近い」と言い、敵対心を持った。

「他の墓地から排除されたイスラム教の人たちが気の毒で引き受けてきたが、今度は自分たちが排他的になっている。この墓地で宗教的な争いを起こしてほしくない」。管理会社の社長は、そう懸念した。

https://www.sankei.com/article/20240104-U4UZUNIFXVIJ3II7JFKK3WJNOY/