衆院選の「前哨戦」とも言われた参院2補選。自民党は山口では圧勝、静岡は「予想外の敗北」とも言われた。この結果をどう見ればよいのだろう? 実は私が気になったのは野党の振る舞いでした。

朝日新聞にパワーワードが
 静岡のおさらい。産経新聞は「与党は党一丸で臨んだ接戦の静岡で野党推薦候補に勝ちきれなかった」(10月25日)と書いています。さらに朝日新聞にはパワーワードが。

《首相が懸命になるほど、この4年間の政権批判も勢いが増すことから、県連内では「寝た子を起こす。首相には来てほしくない」との声さえ上がった。》(10月25日)

 寝た子を起こす!

 やはり10月31日の衆院選のテーマも「岸田政権を問う」ではなく「この4年間の安倍・菅政権も問う」なのだろう。当然と言えば当然です。

気合が入る立憲民主党だが
 日経新聞は川勝平太知事が山崎真之輔氏(野党系)の応援にまわったのが大きいと書く(10月25日)。川勝知事は「リニア中央新幹線の建設問題で政府と対立し、6月の県知事選で30万票以上の差をつけて自民推薦候補を破った」人である。県政もやはり焦点でした。

 今回の静岡の結果を受けて、立憲民主党内には「共産と候補を一本化していない静岡補選で勝利した。衆院選は期待できる」という声が広がったという。野党第一党だから気合が入っている。

 ただ、先週末の読売新聞にはこんなことが書かれていた。

《立民は当初、補選は「衆院選の前哨戦にはあたらない」(福山幹事長)として、党幹部の静岡入りに慎重だった。だが、報道各社の情勢調査で予想以上の善戦が報じられると、方針を転換した。》(10月23日)

 この立憲民主党の態度がどうしても気になったのです。朝日も書いていた。告示日を前にした頃のことを。

立憲民主党の「ズルい振る舞い」
《立憲の枝野幸男代表は「政権選択の大決戦と構造は違う」と主張。記者団から応援入りの予定を問われても「ちょっと余裕はない」と距離を置いていた。》(10月25日)

 当初、立憲の幹部は負けそうな選挙からは距離を置いていた。それが勝てそうとなったら前面に出てくる。こういう振る舞いはズルくないだろうか。負けそうな選挙は国政と関係がないという態度は菅前政権を思い出した。

政権選択の大決戦
 ここからは10・31を考えてみる。枝野氏は衆院選を「政権選択の大決戦」と言っている。ではこの大決戦で政権交代ができなかったらどうするのか。自民が単独過半数をとったら枝野氏は責任をとるのだろうか?

 野党共闘を掲げるなら野党第一党のリーダーとして観客(有権者)に覚悟をプレゼンすべきだ。枝野氏の世の中への見え方ひとつで選挙(=まつり)のムードも上昇する可能性だってあるからだ。

 そうしないと口では政権交代だ野党共闘だと言っていても、本当は自分の党の議席が伸びるだけでシメシメなのだろうと思われてしまう。少なくとも私は意地悪にそう見る。

 決戦ムードを煽っていても選挙が終わったら自民も立憲もお互いに「勝った、勝った」では観客は白ける。だから野党第一党の振る舞いも問われるのだと思う。想像してほしい、政権交代ができなくても幹部の顔ぶれは同じ、そこそこの権力を握り、来年の参院選が近づいてきたらまた闘いだと叫んでみせる。この繰り返し……。

 こういう野党マジックがなんとなく続く限り、盛り上がるまつりも盛り上がらない。一般客を魅了できない。

 こんなことも指摘されている。立憲の党勢が伸び悩む理由のひとつとして党内外から指摘されるのが、「結党の理念」の薄れであると。