総選挙に向けて、各党がそれぞれ「〇〇に一律〇〇万円を給付する」といった、バラまき策を公約にしている。

 しかし、それら大盤ぶるまいの口約束の中には、「高速道路無料化」とか、「高速料金大幅値下げ」といったものは、まったく見当たらない。

 マイカー族は、09年から実施された「高速料金の休日上限1000円」を懐かしみ、「またあれをやってくれないかなぁ」という声が根強いのだが……。

 本当に高速無料化や、大幅値下げはできないのだろうか?

文/清水草一 、写真/ベストカーWeb編集部

■民主党(当時)政権時、高速道路無料化は検証まで進んだが、その後中止に
 03年、野党だった民主党は、「高速道路無料化」をマニュフェスト(公約)として掲げた。そして、09年の総選挙で政権を奪取すると、その実現に向けて動き出した。2010年度から翌年にかけては、「高速道路無料化社会実験」として一部の路線を無料にし、その影響を調べた。

 その上で、2012年度から、東名や名神などの主要路線や、首都高速・阪神高速などの都市高速を除いた路線を無料化する予定だったが、2011年3月11日、東日本大震災が発生。そんなことをしている場合じゃなくなり、無料化社会実験も中止になってしまった。

■民主党政権が存続していたとしても、無料化は困難だった?
 では、大震災がなければ高速道路無料化は実現したのか? と言えば、非常に怪しい。なぜなら無料化には、年1.3兆円もの費用が必要だったからだ。

 日本全国の高速道路の料金収入は、年間約2兆円。すべての路線を無料化すると年間2兆円かかるけれど、民主党政権は一部を有料のまま残す構想だったので、1.3兆円となっていた。

 しかし、民主党政権は、「コンクリートから人へ」の公共事業削減や、「2位じゃだめなんですか」の事業仕分けに象徴されるように、国の予算を大幅に削減しようとしていた。高速道路無料化は、それに逆行する。

 また、政権を取る前、民主党の小沢一郎氏(当時代表代行)は、「政権交代が実現すれば、自民党が隠していた埋蔵金がいくらでも出てくる」と断言していたが、そんなものはどこにもなかった。

 つまり、当時の民主党政権には、高速道路を無料化する予算が捻出できなかったのだ。

 また、政権交代が起きる寸前、自民党の麻生内閣は、リーマンショックによる緊急経済対策として、「高速料金の休日上限1000円」を実施。前述のようにマイカー族には好評だったが、渋滞が前年の約2倍に激増したため、「無料化したら、もっと大変な渋滞になる」という警戒感も生まれていた。

 こういった経緯により、日本人は「さすがに高速無料化はムリでしょ」と考えるようになり、今回の総選挙でも、それを公約にする党は現れなかったのである。

■「無料化は無理」な雰囲気の中、「無料化できる!」と言っちゃう根拠とは
 しかし、今だからこそ私は言おう。「高速道路は無料化できる!」と。

 もちろん、すべての路線を無料化したら、一部の路線で大変な渋滞が発生し、高速道路の意味をなさなくなる。だから全部は無料にしないほうがいい(笑)。老朽化対策の予算も必要なので、完全無料化はまったく現実的ではない。

 しかし、かなりの路線を無料化することはできる!

 いったいどうやって?

 高速道路の債務を、国債で肩代わりするのである。