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昼夜・場所を問わず行われる職務質問を、受けやすい男性の特徴とは

「こんばんは〜。〇×署ですが、ちょっとお時間よろしいでしょうか……」と警察官に声をかけられ驚いた経験を持つ人もいるはず。犯罪抑止・摘発のため行なわれる「職務質問」だが、「多い日は1日に3回、1年中“職質”されています」とこぼす40代男性がいる。彼はなぜお巡りさんの「標的」になってしまうのか──。

 警察官職務執行法に基づき行なわれる職務質問。「異常な挙動」や「犯罪を犯し、もしくは犯そうとしている」と疑うに足ると判断した場合などに、当該人物を「停止させ質問することができる」という警察官の職務権限だ。関東地方の警察では「こんばんは」と声をかけることから派生した「バンカケ」という隠語もある。

「リーゼント刑事」の愛称で知られる元徳島県警警部・秋山博康氏が語る。

「職務質問が全国で積極的に行なわれるようになったのは、2003年から。その前年、刑法犯の認知件数が年間285万件と戦後最多になり、警察庁が全国の警察に通達を出したのです」

 当時は、ひったくりや自転車盗の「街頭犯罪」や、空き巣、住居侵入といった「侵入犯罪」が刑法犯認知件数の大多数を占め、その抑止策として警察庁から全国警察に「職務質問を強化せよ」との大号令がかけられた。そうした努力もあり、現在の刑法犯認知件数は当時から4分の1と、戦後最少水準になっている。

 一方でその結果、「街を歩いていただけで職質された」という人が増え、現在、YouTubeなどの動画サイトには、警察官とのやり取りを記録した動画も多数アップされている。

 そうしたなかで話題となっているのが「1年中職務質問される男」と題された40代男性のYouTube動画だ。

 動画をアップしているのは、東京・上野でアクセサリーショップを営むA氏。10年ほど前から頻繁に職務質問されるようになり、警察官の同意を得た上でその模様を録画、記録として残している。

「前職は商社マンで、さっぱりとした身なりだったからか、職務質問を受けることはありませんでした。職質が急増したのは、ドレッドヘアにしてからですね。タトゥーも入れていないし、明らかに、このヘアスタイルが原因と思います(苦笑)」

 A氏への職務質問は昼夜、場所を問わず行なわれる。

「出勤や帰宅途中、休憩時に喫煙所でタバコを吸っている時など、声をかけられるのは四六時中です。開店準備など仕事に支障が出ると訴えても『すぐに終わりますのでご協力を』と言われて応じざるを得ない。カバンを持っている時はすべてチェックされるので、10〜20分ほどかかります。警察官によっては、ベルトのバックルの裏を調べたり、タバコケースの臭いもチェックするので、かなり時間がかかるんです」

 短時間で終わるケースもあるとはいえ、警察官に囲まれている間の「周囲の視線がつらい」とA氏は言う。

「公衆の面前で店のシャッターに手を付き、ポケットを探られるのは屈辱的ですね。小学生の娘の目の前でパトカーに横付けされ、身体調査をされるのもつらい。『パパ、逮捕されちゃうの?』って……。警察官によっては、営業中の店舗に入ってくる人もいます。自分よりはるかに若い警察官に『これからどこ行くの?』などと高圧的な態度で詰問されるのも不本意ですね」

 これまで、「職質には100%協力してきました」というA氏だが、憤懣やるかたない思いは隠せなかった。前出・秋山氏が語る。

「Aさんは職質に協力しながら、何度も同じ思いをされており気の毒に思います。警察OBとして、ご協力にも感謝の念でいっぱいです。見た目が“目立つ”方が職務質問の対象になりやすいのは事実で、これは、この先の課題として考えるべきことです。ただ、警察官は決して嫌がらせ目的で職質を行なっているわけではないことはご理解いただきたい。やましいことがないのに頑なに拒否すると、怪しまれて不利益を被るリスクが高まってしまいます」

 警察庁の大号令から15年余り。職質するお巡りさんがよほど理不尽でなければ、素直に“協力”するのが市民の務めなのだろう。

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