第5波の感染拡大の大きな原因となったデルタ株。そのウイルスを、国立遺伝学
研究所と、新潟大学が分析したところ、8月下旬のピークの前に、ほとんどの
ウイルスが増殖できないようなタイプに置き換わっていて、結果的にウイルスが
死滅し、第5波収束の一因になった可能性があると発表しました。

実は、このデルタ株が死滅した仕組みには、私たち”日本人”が体内に多く持つ
といわれるある物質が関係しているそうなんです。一体なぜ、デルタ株が
死滅していったのか。

そもそもウイルスは体内に入り、細胞に入り込むと自分を作る「設計図」を
大量にコピーして、そこからウイルスがどんどん作り出されます。でも、
時には設計図のコピーミスで、違った形のウイルスができることも。これが
”変異株”で、デルタ株もこうしてできたと考えられています。

ただ、ウイルスの中には コピーミスを修正しようという“物質”がいて
間違った設計図を正しいものに書き直そうとするんです。

ところが、その作業を邪魔しようという酵素が、私たちの体の中にはいるんです。
その酵素は、ウイルス自体も攻撃するんですが、今回の研究では、設計図の
修正作業を邪魔する働きもあると推測しています。この酵素の働きが強いと、
設計図は修正されないまま、ウイルスの変異がどんどんと進みます。

さらに、デルタ株は、感染力が強いので一気に広まっていきますが、それと
同時に体内でコピーミスもどんどん起き、設計図は修正されないまま
グチャグチャに!そうなると「もうお手上げ!」原型をとどめていない
設計図では、ウイルスを作れず、増やすこともできません。その結果、
多くの人の体内で、デルタ株が死滅していったのではないかということです。

これが第5波収束の一因になった可能性があると考えられています。また、
分析を行った、国立遺伝学研究所の井ノ上先生によると、「日本人を含む
東アジアの人や、オセアニアの人は、設計図の修正を邪魔する酵素の働きが
活発」なんだそうです。