コロナ感染対策によりあるインフルエンザウイルスが絶滅か
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを受けて講じられた感染拡大防止措置により、米国では、2020〜2021年のインフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ症例が、かつてないほどの低水準に落ち込んだことは周知の事実だ。

そんな中、山形系統のB型インフルエンザウイルス(以下、山形系統)については絶滅した可能性も考えられるとする研究報告が発表された。

メルボルン大学(オーストラリア)微生物学・免疫学分野のMarios Koutsakos氏らによるこの報告は、「Nature Reviews Microbiology」に9月28日掲載された。

インフルエンザウイルスにはA、B、C、Dの4つの型があり、このうちA型およびB型インフルエンザウイルスはヒトの間で流行する。

144種類の亜型があり、ヒト以外にも鳥類やブタなどに感染するA型インフルエンザウイルスは、数年から数十年の間隔をおいて大流行する。

これに対して、B型インフルエンザウイルスはヒトのみに感染し、亜型は存在せず、オーストラリアのビクトリア州で分離されたビクトリア系統と山形県で分離された山形系統の2系統に分類される。

山形系統は、他の主要なインフルエンザウイルスに比べると感染性が低く、進化のスピードも遅いため、ワクチンに含まれる山形系統の株は、2015年から変更されていない。

Koutsakos氏らの調べによると、2020〜2021年のインフルエンザシーズンに、世界で山形系統の症例疑いとして公衆衛生当局に報告されたのはわずか31例で、これらの患者から実際に山形系統に属する株が分離された例や遺伝子検出法で同定された例はなかったという。

研究グループは報告書の中で、「これらの事実と、COVID-19パンデミックを受けて講じられたさまざまな感染拡大防止措置が組み合わさって、山形系統による感染が世界レベルで強力に抑制された。この系統のウイルスが絶滅した可能性もゼロではないだろう」と結論付けている。

米国の感染症専門家たちは、山形系統が本当に絶滅したのかどうかは、1インフルエンザシーズンだけでは判断できないと指摘する。

専門家の一人で、米メイヨークリニックのRichard Kennedy氏は、「山形系統は、特定のシーズンに急増したかと思えば、別のシーズンには姿を消す傾向がある」と述べ、より長期的な目で観察する必要があると主張している。

一方、米国感染症財団でメディカルディレクターを務めるWilliam Schaffner氏は、「山形系統が本当に絶滅したのなら、現在、インフルエンザワクチンに含まれている山形系統の株を、より感染性が高く危険な別の株に置き換えることで、ワクチンの有効性を高められる可能性がある」と話す。

Kennedy氏もSchaffner氏の見解に賛同するとともに、ワクチンを、現状の4価ではなく3価に変更する可能性についても言及し、「3価ワクチンなら製造費も抑えられ、製造自体も簡単になるので製造量も増え、結果的にワクチンを接種できる人の数も増える」と述べる。

さらにKennedy氏とSchaffner氏は、人々が今シーズンもインフルエンザの予防接種を受け、同時にマスクの着用やソーシャルディスタンシングなどの感染防止対策を続けていれば、山形系統が本当に絶滅する可能性があることにも同意を示している。(HealthDay News 2021年10月25日)

Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Cynthia S. Goldsmith and Thomas Rowe. 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス

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構成/DIME編集部

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