@支持層を広げるカギは「憲法論議」
衆院選で議席を増やした維新と国民民主は11月9日、幹部同士が国会内で会談し、憲法改正論議などで協力することを確認した。


国民民主(玉木雄一郎代表)は選挙後、同じ旧民主勢力である立憲との立ち位置の違いを強調しており、野党は左派の「立憲・共産」と中道の「維新・国民」の枠組みに大きく分かれようとしている。

立憲が支持層を「中道」へ広げるには、国民民主とのパイプを維持し、協力関係を再構築する必要があるだろう。その呼び水になるのが、これまで立憲が封じてきた「憲法論議」ではないか。

安倍・菅政権下では自民や維新が憲法審査会で議論を進めようとしてきたが、立憲は国民投票法の改正をめぐる手続き論にこだわり、ストップをかけてきた。「自民の土俵には乗らない」という駆け引きでもあったが、今回、国民民主が維新に接近したことで、路線の違いがより鮮明になった。

ただ、憲法9条に「自衛隊」などを明記する自民党案について、問題があるという認識では立憲と国民民主は一致している。自衛隊と集団的自衛権の関係をどう整理するか、その解決策は詰めきれていないが、立憲が議論に応じる姿勢を示せば、国民民主も一致点を探る対話に参加してくるだろう。

もともと立憲は綱領に「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います」と掲げている。憲法の問題は9条だけではない。53条には臨時国会の召集規定に「抜け穴」があるため、これまで野党が招集を求めても、自公政権が応じない事態が繰り返されてきた。

憲法はなぜ守らなければならないのか。変えるなら、どこをどう変えるべきなのか。「未来志向」の憲法論議が深まれば、立憲につきまとう「批判ばかり」のイメージも薄まり、中道・無党派層の取り込みにつながるはずだ。

A共産との共闘、ビジョンの説明を
もう一つの論点が、野党共闘のあり方だ。

今回の衆院選では、立憲、共産、れいわ新選組、社民の4党が市民団体「市民連合」と政策協定を交わすことで、協力態勢を築いた。仮に政権交代が実現した場合、これらの政党で連立を組むことが想定されるが、共産主義を目指す共産党が参加することには、野党支持層でも抵抗感が強い。

そのため、共産の志位和夫委員長は「日米安保条約や自衛隊、天皇の制度の問題など、他の野党との相違点は野党連合政権(新政権)に持ち込まない」と説明。新政権への関わり方も「限定的な閣外からの協力」とすることで立憲と合意し、選挙戦にのぞんだ。

それでも、自民党からは「『(自公の)自由民主主義政権』か『共産主義(が参加する)政権』かの選択選挙」(自民党・甘利明氏のツイッター)などと攻撃され、防戦を強いられた。今回、立憲が比例区で議席を大幅に減らしたのは、新政権についての説明が足りず、「共産アレルギー」を払拭できなかったことが原因の一つだろう。

選挙後、立憲内には共産との共闘を解消すべきだとの声も挙がっているという。だが、解消すれば、同一選挙区に複数の野党候補が立つ状態となり、議席をさらに減らすリスクがある。今回の衆院選で、野党統一候補に投じた有権者への「裏切り」にもなるだろう。11月10日の首相指名選挙では、共産は立憲の枝野氏に投票し、共闘路線を維持する姿勢をアピールしている。

公示前より減らしたとは言え、野党共闘で96議席を得た立憲の責任は、新政権の絵姿を明確にし、共産を含む共闘路線を有権者にきちんと理解してもらうことだ。

左腕で共産と肩を組みながら、右手で国民民主と手を握る――。

筆者が期待する野党の連携は、綱渡りのようなバランス感覚と包容力が求められる。しかし、それを実現してこそ、政権担当能力のある野党第1党と言えるだろう。次のリーダーは立憲だけでなく、野党全体をどう引っ張っていくか、その実行力が問われている。

(文:小林豪 編集:中村かさね)

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6182dab2e4b0a518ac9adf91