立憲民主党、自公批判票の2割弱しか取り込めず 衆院選の投票行動分析 早大・日野愛郎教授が分析

 先の衆院選の際に早稲田大政治経済学術院の日野愛郎あいろう教授(投票行動)が行った意識調査で、自民、公明両党の連立政権を評価しない有権者のうち、比例代表の投票先を立憲民主党と回答した割合は2割未満にとどまり、野党第1党が政権批判層を取り込めていなかった実態が明らかになった。党の再生策を競う立民代表選に関し、日野氏は「党内に多様な人材がおり、若者らの民意を反映した政策を掲げる『将来の与党』と思われる存在になるべきだ」と訴えている。(大野暢子)

 調査は衆院選投開票前日の10月30日、インターネット上で4844人を対象に実施。安倍・菅政権を「よくやってきた」と評価した人は回答者の20.7%で、「まあよくやってきた」は37.1%。評価しない回答の「あまりよくやってこなかった」は17.0%、「よくやってこなかった」は25.0%だった。

 「あまりよくやってこなかった」と「よくやってこなかった」とした人のうち、投票先を立民と答えたのは17.4%で、政権批判層の受け皿になりきれなかった。批判票の行き先は日本維新の会11.2%、自民7.4%、共産党6.3%、国民民主党4.9%、れいわ新選組4.6%と分散していた。「未定」は22.4%に上り、「棄権」も8.2%だった。

 立民は森友・加計学園問題での政権のずさんな公文書管理などを批判し、政府の新型コロナウイルス対策を厳しく追及していたが、日野氏は「立民は強力な批判票を他の野党と分け合う構図になった」と指摘。「穏健な批判票は維新に流れる結果となり、自民は政権を評価した人を手堅く取った」と分析した。

◆「自民や維新が違いを目立たせないようにした」
 また、公約から各党の政治的な立ち位置を座標軸で分類したところ、与野党が「リベラルかつ社会保障を重視」する領域周辺に集中していた。日野氏は「自民や維新が立民などとの違いを目立たせないようにした。さらに、多くの野党が狭い支持層で票を奪い合うことになった」としている。

 立民が選挙戦でアピールした選択的夫婦別姓制度や同性婚を可能とする法制度の実現などは、中高年と比べて若年層の注目度が高かったと判明したが、実際の投票行動には結びついていなかった。日野氏は「こうした争点を重視する若者が必ずしも投票に向かっていないため、若年層のための公約の策定と、それを伝える力を持つ候補者の開拓が鍵だ」と話した。

◆立民代表選「年金制度改革のような看板政策を」 日野教授
 30日に選出される立憲民主党の新代表には、衆院選の敗因分析を踏まえ、来夏の参院選に向けた党の立て直し策が求められる。日野教授に、党が目指すべき方向性などを聞いた。