立憲民主党の新たな代表が決まった。この先、注目したい一つが「批判」を巡るスタンスだ。自公政権と対峙してきた同党は、かねて党外から「何でも批判の立民」とレッテル貼りされた一方、10月の衆院選で惨敗すると、党内でも批判政党のイメージ払拭を訴える声が上がった。とはいえ、批判はそんなに悪いことなのか。議論を深める上では、むしろ必須ではないだろうか。「脱・批判政党」を批判的に検証してみた。(中沢佳子、石井紀代美)

◆「脱批判」意識した泉健太新代表
 「国民の目線に立ち、国民中心の政治をする」。11月30日の臨時党大会で立憲民主党の代表に選ばれた泉健太氏はそう誓った。

 今回の代表選では「脱批判」を思わせる姿勢が目立った。泉氏は討論会などで「批判ばかりで追及一辺倒だと、国民の課題を扱っていないと思われかねない。野党合同ヒアリングを見直し、政策発信を強化する」と政策提案型政党を前面にアピール。候補同士の論争も乏しかった。

 立民は「批判する政党」のイメージが強かった。森友・加計問題、桜を見る会、学術会議の会員任命拒否など噴出する疑惑に、野党合同ヒアリングを繰り返した。日本維新の会副代表で大阪府知事の吉村洋文氏は11月19日の会見で「何でも反対、批判、官僚つるし上げ、スキャンダル追及。そういうことから脱却してほしい」と語った。

◆民主党が政権から転落した後から…
 批判精神の根は、民主党時代から見られた。2009年の事業仕分けで、世界一の性能を目指す国産スーパーコンピューターの開発費を巡り、蓮舫氏が「2位じゃだめなんですか」と詰め寄ったのは有名だ。

 一方、自民党や政府のスキャンダルを追及すると、自身に返ってくる「ブーメラン現象」も相次いだ。こちらも民主党時代からあり、党代表だった菅直人氏は04年、国民年金の保険料未納が判明した麻生太郎、石破茂、中川昭一の3氏を「未納3兄弟」となじったものの、自らの未納疑惑が浮上した。

 政治ジャーナリストの泉宏さんは12年に自民に政権の座を奪われて以降、旧民主や立民の批判色が濃くなったとみる。

 国の機密漏洩防止をうたう特定秘密保護法。集団的自衛権の行使を容認する安保法制。安倍晋三政権は強引な政治を進めつつ、モリカケ桜といった疑惑はどこ吹く風で押し通した。「圧倒的巨大与党を追及し、存在感を示そうとした」

 しかし、衆院選は敗北。「しかも維新という、与党でも野党でもない存在が際立ってきた。存在意義が問われる中、政権交代を目指す党として、政権スキャンダルの追及より政策提案ができる政党の道を選んだ」

◆党内の批判合戦は「自重」か
 泉さんは立民の代表選を「演技でもいいから、もっと論争すればよかったのに」と惜しむ。自民の総裁選では人気の高い河野太郎氏が他候補に攻撃されるさまが話題になった。「自民は政権与党であり続けるという点で党内一致していて、意見が割れても党は割れない。だが立民は内部の対立をのみ込めず、分裂を繰り返した。『批判し合うと党を分裂させる』という危機感が4人にあったのでは」

 政治アナリストの伊藤惇夫さんは「脱批判」を図る立民を「与党と対決する姿勢を明確にしない『是々非々の立場』を掲げた維新が、衆院選で票を伸ばしたのを意識している」とみる。

 身内批判を避けたのは「合併政党」ゆえだと伊藤さん。「党への帰属意識が薄く、政権獲得のために互いに切磋琢磨する文化が定着していない。だから党内で批判が始まると亀裂が入る、という不安に結び付く」