立憲民主党の「顔」でもあり、野党を代表する女性議員の1人でもあった辻元清美さんが10月の衆議院議員選挙で落選した。大阪の小選挙区19のうち、公明党が当選した4選挙区以外は全て日本維新の会が勝つという「維新旋風」をまともに食らった形で、比例復活もかなわなかった。
今回の落選を辻元さんはどう受け止めているのだろうか。11月中旬、大阪の地元で辻元さんにインタビューした。

女性議員が10%下回ったことに貢献してしまった…
 「一番つらいのは、女性議員が10%下回ったことに逆の意味で貢献してしまったこと。責任を痛感しています。
女性議員を1人でも増やしたい、若い世代に1人でも多く続いてもらいたい、政治を志している若い女性たちの道を閉ざさないようにと訴え、しんどいけどブルドーザーのように道を切り開かなければ、という思いで政治活動してきました。自民党を粘り強く説得してNPO法や男女共同参画社会基本法を作ったり、男性議員の指定席だった国対委員長を務めたり、『内縁の夫がいる』などのデマや変な合成写真を流す勢力と戦ったり。しかし、ブルドーザーを一度止めなくてはならなくなりました」

毎年各国の男女格差を示すジェンダーギャップ指数が発表されるたびに、日本のジェンダー後進国ぶりは議論になるが、中でも深刻なのは政治分野の格差だ。2021年に発表された順位は156カ国中147位と、前年の144位よりさらに後退。大きな要因として衆院議員における女性議員の少なさが挙げられるが、今回の衆院選でさらに女性の比率は低下した。

しかも今回は、男女の候補者数はできる限り均等を目指すことを原則とした「候補者男女均等法」が成立して初めての衆院選だった。にもかかわらず、与党を中心に女性候補の数は増えず、候補者に占める女性は17.7%。当選者は9.7%に止まり、前回衆院選の10.1%からも減少した。

「女、女と言っているから落ちたんだ」
しかし辻元さんは、選挙戦序盤は手応えを感じていたという。
「今回の選挙で反応が良かったのは圧倒的に女性。街頭で演説をしていると、女子高校生がビラを取りに来てくれて『初めての選挙で辻元さんに入れます』と言ってくれたり。
森発言(元五輪組織委員会会長の森喜朗氏による女性が入る会議は長くなる、五輪委の女性理事は『わきまえている』などの一連の女性蔑視発言)の影響もあって、女性たちは『わきまえない』ことが国際基準なんだ、これまで我慢していたことを我慢しなくていいんだと気づいたと思うんです。自民党総裁選に高市(早苗)さん、野田(聖子)さんの2人が出たことも大きかった。
そういう気づきが特に若い女性たちを覚醒させている、みたいな手応えはあったんです」

辻元さんは今回の選挙戦の大きな争点として、ジェンダー平等を掲げて訴えた。10月23日には立憲民主党の蓮舫参院議員も駆けつけ、JR高槻駅前で「#女性の声が政治を変える」という街頭演説会も開いた。近隣自治体から多くの女性地方議員が集まり、リレートークを展開した。

だが、選挙戦が終わった時、男性たちから「女、女と言っているから落ちたんだ」「あんな女の集会をやっているから」などという声を浴びせられた。

「そう言われたことは、本当にショックでした。私はいつか女性総理を誕生させたいと思っているので、女性議員を増やしたい、ジェンダー平等を推進することが社会の矛盾を解決すると強く訴えました。
でも、ジェンダー平等という政策はなかなか有権者に届きにくかったし、むしろ反発される感じもあった。世の中は強く、マッチョなものを支持する風潮があるのかと思ったり。選挙戦序盤に感じていた希望が押しつぶされていくような、これまでで一番つらい選挙になりました」

維新は最初から自民より辻元議員を狙い撃ち
辻元さんの選挙区である大阪10区は大阪や京都のベッドタウンである高槻市と島本町で構成される。島本町は町議会の議員が男女半々という「男女同数議会」で知られるが、その島本町では辻元さんは維新、自民の両候補を抑えてトップだった。
辻元さんは選挙終盤、「大阪10区は最後の砦」と訴えた。そこには「維新を止める」砦という意味のほか、自分が落選すれば大阪の衆院議員は全員男性になるという思いも込めていた。