犬は物理法則をきちんと理解しているようです。

ドイツのウィーン獣医大学(University of Veterinary Medicine Vienna)の新しい研究は、3Dアニメーションで表示されたボールが、物理法則を無視したとき、犬は瞳孔や注視時間などに反応があったと報告しています。

瞳孔や対象の注視時間の延長は、期待と異なる動きがあった場合に見られる反応で、乳幼児などでも確認できるといいます。

研究の詳細は、12月22日付で英国王立協会が発行する科学雑誌『Biology Letter』に掲載されています。

物理法則を理解しているイヌ
私たちは物体がどのように動くのかというルールを理解しています。

人間はそれを定式化して、物理学という学問を生み出していますが、そうした理解や学習はどこから始まるのでしょうか?

地球に暮らす他の動物達は、この法則を理解しているのでしょうか?

今回の研究はこうした疑問から、イヌに物理法則に違反したアニメーションを見せどう反応するかを調査しました。

研究者の1人ウィーン獣医大学のクリストフ・フェルター( Christoph Volter )氏は、「ここに学びの原点があるかもしれない」と語ります。

「私たちは、動いている物体を見るとき、物理の法則性に従った動きを期待します。

もしそれが、期待と異なる動きを見せた時、私たちは一体そこで何が起きているのか、より注意深く見ようと反応します。

生後と約6カ月の赤ちゃんやチンパンジーで実験すると、彼らは物理的な動きに対する「期待違反」を確認したとき、対象を長く見つめるようになるのです」

また人間は計算などの負荷が掛かった場合や、驚いたときに瞳孔が広がるという反応を示すこともわかっています。

そして、イヌも同様の反応を見せるようで、怒っている人間の顔を見たときイヌは笑顔の人を見ているときより瞳孔が広がるという報告があります。

そこでフェルタ−氏らは、14匹の成犬に物理法則に従わないボールが転がる3Dアニメーションを見せるという実験を行いました。

イヌたちには、顎を台に乗せた状態で、モニタをじっと見つめるという訓練を行い、このときのイヌたちの視線や瞳孔の状態を調べたのです。

モニタにはカラフルな3Dボールの簡単なアニメーション動画が、ランダムな順序で映されていきます。

ある動画では、転がったボールが止まっている2番目のボールにぶつかって動き出すという、ニュートン力学に従った動きを見せます。

しかし別の動画では、ボールは2番目のボールまで届かずに停止してしまいます。にも関わらず、2番目のボールが何故か突然転がりだすという、物理法則に反した動きを見せます。

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実験に使われたアニメーション。(a)は物理法則に従うが、(b)ではボール同士がぶつからずに転がりだす。 / Credit:Christoph J. Volter et al.,Biology Letters(2021)