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ひとりで500曲以上を作曲
「ドラゴンクエスト」で知られるすぎやまこういちさんは、ドラクエをライフワークと語っていたという。この20年ほどは言論活動でも注目されたすぎやまさんの「音楽」と「信念」を振り返る。

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ドラクエをライフワークと語っていたすぎやまこういちさん

 今年7月、東京五輪の開会式は日本のゲーム音楽に合わせて入場行進が行われた。冒頭に使われたのは、すぎやまこういちさん(本名・椙山(すぎやま)浩一)が作曲したドラゴンクエストの「序曲 ロトのテーマ」。華やかで威風堂々とした曲が開会の雰囲気に合っていた。

「ドラクエ」の名で親しまれるドラゴンクエストは、1986年以来11作が登場。全世界での累計販売・ダウンロード数は8300万本を超える人気ゲームだ。すぎやまさんは第1作からゲーム中の音楽を500曲以上ひとりで作曲してきた。

 音楽評論家の安倍寧さんは言う。

「ゲーム音楽を手がけだした時、すでに作曲家として大御所でしたから、変わったことを始めたなと驚いた。全力で新しい分野を切り開き、確立させたとは凄い」

 ゲームをしているうちに同じ音楽を何度も聴くのだから飽きない曲をと、クラシックを基調にする。最初からオーケストラ編成を念頭に作曲、データ容量が非常に少ない当時のゲームでも躍動感を伝えようとした。

ヒットした作品は枚挙にいとまがない
 31年、東京生まれ。両親は音楽と麻雀などのゲームが大好き。音楽は独学だ。東京大学に進み教育心理学を学んでいる。卒業後、文化放送に入社。フジテレビの開局時に移籍し、音楽番組「ザ・ヒットパレード」の演出で注目を集めた。

 60年以上の縁がある作詞家の橋本淳さんは思い出す。

「すぎやま先生は譜面に基づいて指示するのでカメラマンも照明も皆、譜面を読めないと撮影ができないのです。要求水準が高かった。性格は穏やかなのですが、仕事に没頭する姿には狂気すら感じましたね」

 65年にフジテレビを退社。フリーの作曲家としてザ・ピーナッツ「恋のフーガ」、ザ・タイガース「花の首飾り」、ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」、ガロ「学生街の喫茶店」などを作曲。ヒットした作品は枚挙にいとまがない。

「グループサウンズ(GS)を通じて日本の大衆音楽に新しい世界を開いた功績も大きいのです」(橋本さん)

「帰ってきたウルトラマン」など特撮やアニメ番組、ハウスバーモントカレーのCM、競馬場の発走ファンファーレと作曲分野は広い。

 ゲーム音楽との縁は、将棋ゲームの感想を制作会社に送ったのがきっかけだ。

「まさにファシズムです」
 この20年ほどは言論活動でも注目された。2007年には慰安婦問題に関してワシントン・ポスト紙に全面広告を掲載する中心的な役割を果たす。

 政治評論家の屋山太郎さんは当時を振り返る。

「慰安婦問題は、日本が事なかれ主義を続けた結果、一方の主張が事実のように認識される事態になったと本質をとらえていた。歴史を歪め、日本を貶める動きに事実を示すことで反論しようとした。全面広告に約2千万円もかかりましたが、さらりと負担された」

 日本には自国の弱体化を図ろうとする奇妙な勢力がいる、とも指摘している。