「年をとったら、粗食にするほうがいいんだ」
「最近、肉とかの脂っこいものは避けているんだよ」
「年寄りのひとり暮らしだし、食べられる量を少し食べていれば十分」
みなさんの高齢の親御さんは、こんなことを言い始めてはいないでしょうか? もし、似たようなことを言っていたとしたら、注意が必要です。脅かすわけではありませんが、こういう食事を続けていたら、いつの間にか衰えて、寝たきりや要介護になることもあるかもしれません。

※本稿は佐々木淳氏の著書『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』から一部抜粋・再構成してお届けします。

なぜなら、高齢者の場合、食事量の減少や摂取栄養の低下が「衰え」を進ませる大きなきっかけになるから。年をとってからの食事量低下や低栄養は、てきめんに筋肉量減少・体重減少につながってしまいます。

また、筋肉量や体重が減ると「転倒骨折」や「誤嚥性肺炎」を起こすリスクが高まり、もし骨折や肺炎になって入院でもしようものなら、いっそう筋肉が落ちて衰弱が一気に進んでしまうようになります。

つまり、巷で流行っているから……という理由で、「粗食でいい」「一汁一菜でいい」「簡素な食事で十分だ」などと言っていると、高齢者はいずれ衰える一方となってしまう可能性が高いわけです。

こういった衰えの悪循環を防ぐ唯一の手段が「しっかり食べること」。高齢者が人生のラストステージを健康に生きていくには、「日々しっかり食べること」が必須であり、年をとればとるほど、ちゃんと食べるようにしていく姿勢が求められるのです。

「カロリー」と「たんぱく質」が不可欠
具体的にどのようなものを食べるのがいいのか。まず、高齢者の食の基本は「1にカロリー、2にたんぱく質」です。これを合い言葉にして、毎食、おいしくしっかりと食べること。守るべきことは、ほとんどこれに尽きます。

カロリーは私たち人間が生きていくために必要な「熱量(エネルギー)」です。この熱量が足りていないと、体は自身の筋肉のたんぱく質を分解してエネルギーをまかなおうとし、それによって筋肉や体重が減っていってしまうようになります。

つまり、日々の食事で十分なカロリーを摂れていないことが、低栄養や低体重を招き、高齢者の衰えを加速させる大きな原因となるわけです。ですから、高齢者はとにかく十分なカロリーの確保を最優先にして、いかにもカロリーが高そうなものを意識して摂るようにしていくべきなのです。

また、カロリーの次に確保しなくてはならないのが「たんぱく質」です。たんぱく質は筋肉をはじめ、身体をつくる材料。人は高齢になると、この「材料」をコンスタントに摂取していないと筋肉量を守ることができなくなってきます。

さらに、筋肉量が落ちてしまうと転倒骨折や誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まり、衰えを加速させることにつながります。だから、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などのたんぱく質を毎日欠かさず摂って、筋肉を守るようにしていかなくてはならないのです。

このように、カロリーとたんぱく質は、高齢者が日々の食事で「何がなんでも死守していかなくてはならないもの」。このふたつさえちゃんとクリアしていれば、ビタミンとかミネラルとか、他の細かい栄養素はそんなに気をかけなくても構いません。よほど偏った食べ方をしない限りビタミンやミネラルは自然にカバーされるもの。

カロリーとたんぱく質さえしっかり押さえておけば、高齢者が人生のラストまで生き抜くための体のベースはだいたい整うと考えてよいでしょう。

これが高齢者におすすめの「最強フード」
「脂っこくてこってりしたもの」「肉が多いもの」「揚げ物」「甘いスイーツ」……カロリーが高くて、たんぱく質豊富というと、だいたいこういった食べ物が目に浮かぶのではないでしょうか。実際にこうした食べ物はカロリーが高いので、高齢者の方々はこうした「ハイカロリー・イメージ」の食べ物や料理を積極的に摂るようにしていくといいと思います。

メニューや料理を選ぶ際には、「野菜たっぷりよりも、お肉たっぷり」「ごはんだけでなく、おかずをしっかり食べる」「なるべく油を使ったものを食べる」などをポイントに選ぶようにしていくといいでしょう。

それでは、ここで私が「高カロリー&高たんぱく」を基準にして選んだ「高齢者におすすめの食べもの」をいくつかご紹介しましょう。